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化学療法アップデート
腎細胞癌の分子標的治療
ソラフェニブ、スニチニブの市販後調査を中心に

2009/12/11

◆白血球減少、好中球減少

 血小板減少に次いで白血球、好中球減少の報告件数が多かった。GISTに対して使用された件数とあわせて解析した結果では白血球減少が85.2%、好中球減少が82.7%に発現した。重篤なものは投与開始後2週から認められ、概ね4週以内に発現している。白血球数が1000/mm2未満、好中球数が1000/mm2未満にまで低下した腎細胞癌患者は2例であり、ともに顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤の投与により回復している。

◆手足症候群(HFS)
 腎細胞癌患者でHFS重篤例の報告は1例のみであり、投与中止により軽快している。

◆高血圧
 高血圧の発症も珍しくないが、アンギオテンシン受容体阻害薬、カルシウムチャネル拮抗薬、及びその組み合わせで殆どがコントロール可能である。重篤例は6例の報告があるが、1例を除き中止後再開されている。

◆甲状腺機能低下症
 甲状腺機能低下症は頻度の高い副作用であり、投与前にTSH、FT4、FT5を測定する。甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシンナトリウムの投与を行う必要がある。

承認申請中のmTOR阻害薬

 本邦ではテムシロリムスとエベロリムスの治験が終了し、製造販売承認申請中である。テムシロリムスは注射剤、エベロリムスは経口薬である。テムシロリムスの第3相臨床試験では、予後不良因子が少なくとも3つあるpoor riskの腎細胞癌患者を対象に、IFN-α、テムシロリムス、IFN-α+テムシロリムス併用の3群が比較された。IFN-α群ではIFN-αを週に3回、300万単位から開始し、段階的に1,800万単位まで増量可能とした。テムシロリムス群はテムシロリムスを25㎎、併用群では、テムシロリムス15㎎とIFN-α600万単位を投与している。生存期間中央値はIFN-α群が7.3カ月であるのに対して、テムシロリムス群は10.9カ月と有意に延長し、併用群では8.4カ月であった。PFSは、IFN-α群が1.9カ月、テムシロリムス群は3.7カ月、併用群のPFSも3.7カ月であった。

 クリニカルベネフィット(完全奏効+部分奏効+病態安定≧16週)はテムシロリムス群が46%、IFN-α群は29%であった。これらの結果から、テムシロリムス投与は予後不良患者に対する1st lineでの投与が推奨された。サブグループ解析では、腎摘出術施行ありの患者に比べ、施行なしの患者が、また、組織別では、非淡明細胞腎癌患者に効果が顕著であった8)

 エベロリムスの第3相臨床試験の結果はソラフェニブあるいはスニチニブのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)投与後に進行した患者を対象に、エベロリムス+支持療法(bestsupportive care;BSC)とプラセボ+BSCに2:1で割り付け、比較した試験である。中間解析により、エベロリムス群で有意なPFSの改善が見られたため、クロスオーバーが認められた。この結果、エベロリムス群のPFSは4.0カ月、プラセボ群は1.9カ月であった。エベロリムスはTKI不応例に対しての投与が推奨されるに至った9)

mTOR阻害薬の副作用

 両薬剤に共通して、間質性肺炎が最も注意すべき副作用である。

問題点と展望

 分子標的治療薬の登場は腎癌治療を刷新する契機となった。一方で、臨床例の蓄積とともに、問題点も明らかにされている。最も注意すべきは、完全奏効(CR)例が殆ど認められないことである。サイトカイン治療は奏効率では分子標的治療薬に劣るものの、肺転移に対して3~5%程度の症例にCRが認められる。また、中止時に急激な増悪をきたすリバウンド例が存在することも問題である。中止や切り替え時には注意深く患者を観察する必要がある。

 第2世代の血管新生阻害薬(axitinibとpazopanib)も治験中であり、今後さらに腎細胞癌の薬物治療の選択肢は増えて行くものと考えられる。各々の薬剤の利点と欠点を理解した上で、副作用に十分注意を払いながら、個別化医療として対応して行く必要がある。分子標的治療薬の投与順序あるいは併用療法(分子標的治療薬2剤同士あるいは分子標的治療薬とサイトカイン治療)が今後の課題となることが予想される。



[文献]
1) Escudier B, Eisen T, Stadler WM, et al: Sorafenib in advanced in clear-cell renal-cell carcinoma. N Engl J Med 356: 125-134, 2007.

2) Akaza H. Tsukamoto T, Murai M, et al: Phase II study to investigate the efficacy, safety, and pharmacokinetics of sorafenib in Japanese patients with advanced renal cell carcinoma. Jpn J Clin Oncol 37: 755-762, 2007.

3) ネクサバール錠200㎎市販後調査最終報告 2008年12月

4) Motzer RJ, Hutson TE, Tomczac P, et al: Sunitinib versus interferon alfa in metastatic renal cell carcinoma. N Engl J Med 356: 115-124, 2007.

5) Rini BI , Tama ska r I , Shahe en P, et al:Hypothyroidism in patients with metastatic renal cell carcinoma treated with sunitinib. J Natl Cancer Inst 99:81-83,2007.

6) Chu TF, Rupnick MA, Kerkela R, et al:Cardiotoxicity associated with tyrosine kinase inhibitor sunitinib. Lancet 370: 2011-2019, 2007.

7) スーテント市販後調査結果のお知らせ 2009年3月

8) Hudes G, Ga rducc i M,Curti BD, et al:Temsirolimus, interferon alfa or both for advanced renal-cell carcinoma. N Engl J Med 356: 2271-2281, 2007.

9) Motzer RJ, Escudier B, Oudard S, et al:Efficacy of everolimus in advanced renal cell carcinoma:a double-blind, randomized, placebo-controlled phase III trial. Lancet 372: 449-456, 2008.


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