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がん医療対談
日本が世界をリードする時代に
消化器癌治療を展望する

2009/12/03

分子標的治療薬の本格導入

吉田 今年のASCOで最も注目を集めたのがトラスツズマブをHER2陽性進行胃癌に用いたToGA試験に関する報告だと思います。どのように評価されていますか。

瀧内 すばらしいデータです。結果も非常に明確です。ToGAは、HER2の発現が、免疫組織細胞化学染色法(IHC)3+あるいはFISH法陽性例を対象に、カペシタビンあるいは5-FU+CDDP±トラスツズマブの有効性を比較するというプロトコルで行われた第3相試験です(下図)。トラスツズマブ併用群のMSTは13.8カ月で、非併用群の11.1カ月に比べ2.7カ月の延命があり、IHC強陽性例では併用群16カ月、非併用群11.8カ月でその差は4.2カ月とさらに大きなものになっており、トラスツズマブの有意な上乗せ効果が示されています。この結果から日本国内における早期の保険適用を強く望んでいます。

 また、この試験ではフッ化ピリミジン系抗癌剤とCDDPにトラスツズマブを併用するレジメンが分化型癌に有効なことが明らかになりましたので、SPRITS試験やFLAGS試験のサブセット解析で未分化型癌への有効性が明らかになったTS-1+CDDP併用療法との棲み分けも可能だと考えています。

吉田 対照群の成績をみると、HER2陽性胃癌は比較的予後が良好な印象を持つのですが。

瀧内 そのような見方も可能です。ToGA試験では2次、3次療法に移行する治療戦略をとるアジア諸国の症例が56%を占めていたことが、対照群でも良好な予後を示した理由だと言えます。

吉田 なるほど。疑問が解消し、すっきりしました。ベバシズマブについては、現在、どのような状況にありますか。

瀧内 ToGA同様のプロトコルで、国際共同臨床試験AVAGASTが行われています。既に症例登録は終了し、来年のASCOで成績が公表される予定です。大いに興味のあるところです。

3剤併用療法の可能性

吉田 この他に注目される様なトピックスについてはいかがですか。

瀧内 切除不能・進行再発胃癌を対象に、TS-1+CDDP併用療法にドセタキセルを加える治療レジメン(DCS療法)の有効性に関して、神奈川のグループが第2相試験の結果を今年のASCOで報告しています。奏効率が80%超でMSTが17カ月という驚異的な成績です。欧米諸外国の標準治療が殺細胞性抗癌剤の3剤併用療法となっていますから、日本としての結論を出しておかなければいけないと思います。

吉田 この成績をみると、術前化学療法として使えるのではないかと思うのですが、臨床試験としてはどのような状況なのですか。

瀧内 術前化学療法としてのTS-1+CDDP併用療法を検証する目的で、JCOG0501試験が進行中です。胃癌に対する術前化学療法の可能性は、英国を中心に行われたMAGIC試験によって示されており、特に高度進行胃癌(stage Ⅲb)では術前化学療法が治療戦略のひとつとなり得ることから、DCS療法がそこに組み入れられればと期待しています。

吉田 ACTS-GC試験の成績から、術前化学療法は不要という雰囲気もありましたが。

瀧内 ACTS-GCのサブセット解析を行うと、やはりstageが進行するほど成績が悪くなっています。特にstageⅢbでは3年以内の再発率が50%を超えています。術前化学療法は、検討する価値が十分にある治療戦略だと思います。

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