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関心集めた新規制吐療法
支持療法の国際会議MASCC総会報告

2009/12/01

埼玉医大国際医療センター教授の佐伯俊昭氏

世界の孤児だった日本の制吐療法

 PROTECT試験はHelsinn社からpalonosetronを導入した大鵬薬品による承認取得のための第3相試験という側面があった。3剤併用のためには、小野薬品工業が申請中のaprepitantを併用することになり、2剤の未承認薬を使った臨床試験となると無理があった。

 原因はやはり世界の標準薬がなかなか手に入らない日本の事情ということになるだろう。斉藤氏は、「palonosetoronが使えない国は旧東欧諸国や南米諸国などがある。aprepitantが使えない国もあるが、双方が承認されていない国とは日本だけではないか」と話す。

 用量についても疑問する声が上がった。PROTECT試験では、palonosetronを0.75㎎使用しているが、欧米では0.75㎎と0,25㎎との比較が行われ、双方に差がなかったという理由から0.25㎎が主流であり、MASCCも0.25㎎を推奨していた。日本側が0.75㎎を採用したのも、国内で行った第2相試験が、0.75㎎が最適とする結果を出したためだ。日本発のエビデンスでMASCCのガイドラインを変えようという関係者の期待は結果的に肩透かしを食った格好だ。

 しかし、全ての国々がaprepitantを使用できるわけではない以上、そうした国々の事情に配慮してもいいのではないかという疑問が残った。また、細かい基準から逸脱したことから、PROTECT試験に冷淡な評価を下すという論法自体を疑問視する声がないわけではない。

 しかし、斉藤氏は「世界のガイドラインを変えようというのであれば、用量についてだけでも世界の基準で進めるべきだったかもしれない」と振り返る。「MASCCの理事先生方も日本がaprepitantとpalonostronの双方が承認されていないという事態がよく飲み込めていなかった可能性がある。日本の医療があまり制吐療法に注意を払ってこなかったツケも今回払わされたという気もする」と語った。

日本でもガイドライン整備へ始動

「日本には制吐療法のガイドラインがないのか?」

 海外の癌の専門医に驚かれてしまうと語るのは、埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科教授の佐伯俊昭氏だ。「私たち医師は、今まで癌を叩く薬には一生懸命になったが、制吐剤については関心が低かった。しかし、海外では癌化学療法の専門家が制吐剤のような支持療法にも高い見識を持っている。日本の医師も心を入れ替えないといけない」

 制吐剤のガイドラインにはMASCCのほかASCOやNCCNのものがある。日本国内ではそれらを準用している。しかし、「薬剤のラインナップをはじめ、日本の医療環境とは合致していない側面もあり、日本独自のガイドラインを整備する必要がある」(佐伯氏)。

 現在、帝京大学医学部腫瘍内科教授の江口研二氏、福岡大学医学部腫瘍・感染症・内分泌内科学教授の田村和夫氏らの協力を得て制吐療法のガイドラインを作成中だ。10月の日本癌治療学会でドラフトを公表し意見集約を行い、2010年早々には発効させたいという。「今年末か来年早々にplonosetoronやaprepitantといった新しい制吐剤が日本で承認されることことが予想される。薬が出てもガイドラインがないという事態は避けたい」と佐伯氏は語った。

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