日経メディカルのロゴ画像

インタビュー
医師主導治験がドラッグ・ラグ解消の切り札です
国立がんセンター中央病院臨床試験・治療開発部長 藤原康弘氏

2009/11/30

1960年生まれ。84年広島大学医学部卒業。国立がんセンターレジデント、広島大学病院助手、米国メリーランド大学留学などを経て、97年に厚生労働省医療機器審査センター勤務。2002年同国立がんセンター中央病院医長。07年に臨床検査部長、乳腺・腫瘍内科グループ長治験管理室長兼任。08年から現職。

医師自ら製薬会社と治験薬の提供を交渉

――データの質を担保するためには多くの第3者を動員しなければならないということですね。医師主導の臨床治験といえども医師の裁量にまかせて進むということではないのですね。

藤原 メーカー主導の治験と異なり、人員も使える予算も非常に小さなものです。その上で、データの質と客観性の確保はおろそかにできません。こうした業務を日常診療に携わる医師が進めるわけですから大変です。

 治験プロトコールを作成して、治験薬の提供をお願いするメーカーに提出して承認してもらう必要もあります。実際にトラスツズマブの場合はメーカーに出向いて、計画を説明させてもらったこともあります。

 スイスのロシュ本社にも理解しておらえるように英文でプロトコールを書き、担当者とE-メールでやり取りしました。了解してもらったプロトコールは当然ですが日本語に翻訳して治験申請を行いました。カルボプラチンでも同様で、現在製造元のブリストルマイヤーズとの間でいろいろ相談しています。

――先生自身がそのような仕事をされるとは驚きです。ドラッグ・ラグは、乳癌以外でも多くの癌やそのほかの難病などで問題になっています。そのつど、医師主導治験を組んで医療現場に負担をかけるということが根本的な解決になるのかという疑問もわきますね。

藤原 その指摘はもっともだと思います。われわれもこれが理想的な方法であるとは考えていません。医師主導治験で行えるのは、現行の仕組みのもとではランダム化第2相試験が限界ですし、症例数も100例がせいいっぱいです。

 では他にどのような解決策があるのか、逆にお尋ねしたい。今のままではカルボプラチンが組み込まれた標準治療を行うことができず、ASCOで発表されるような国際臨床研究にも参加できません。黙っていれば、誰かがやってくれるのかというとそういうことはありません。こうした状況を打開するために、現状で何ができるのかを考えると医師主導治験が最も確かな方法なのです。状況が好転するのを待ち続けるだけでは何も変わらないのです。

  • 1
  • 2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Cancer Review on WEB

この記事を読んでいる人におすすめ