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化学療法アップデート
肺がんにおける化学療法の役割
――手術例から進行肺がんまで

2009/06/19
神奈川県立がんセンター呼吸器科 斉藤春洋氏、坪井正博氏

2、 血管内皮増殖因子モノクローナル抗体(抗VEGF 抗体)

 ベバシズマブは、腫瘍細胞の増殖のために、酸素と栄養を供給する血管新生を促進する血管内増殖因子VEGF)に対するモノクローナル抗体である。扁平上皮がんを除く進行肺腺がんに対する初回治療としてCBDCA/パクリタキセルにベバシズマブの併用上乗せ効果を検証した結果、約2カ月のMSTの延長を認めた(併用群12.3カ月vs.非併用群10.3カ月)。ただし、喀血や消化管出血などの副作用があり、治療対象の選択に注意が必要である。なお、本剤は、本邦においては大腸がんで承認されているが、肺がんへの適応は承認申請中である。

小細胞肺がんの化学療法の適応 

 小細胞肺がんは、診断時には進行例が多く、放射線照射の適否の評価に重点がおかれ、限局型 limited disease(LD:病巣が一側胸郭に限局し、同側肺門・縦隔・鎖骨上リンパ節転移を含む)と進展型 extensive disease(ED:LD以外)に分類される。小細胞肺がんは非小細胞肺がんに比較して早期に血行性・リンパ行性転移を来し、診断時には約70%がED例であり、LD例は約30%にすぎない。標準的な治療を施行した場合、LD例のMSTは16~24カ月、ED例は6~12カ月である。LD例には、化学療法と放射線の併用療法が施行され、ED例に対しては、2剤以上の抗がん剤による多剤併用化学療法が行われる。

1、小細胞肺がんLD 病期

 LD 例には化学療法と放射線療法の同時併用が施行される。化学療法は、PE(CDDP/エトポシド)療法が標準治療として施行されることが多く、放射線照射は化学療法1コース目の早期から併用する。予防的全脳照射(prophylacticcranial irradiation: PCI )に関しては、メタアナリシスにより予後改善効果が示されており、LD・EDにかかわらず完全奏効(CR)例には適応がある。現在、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で行われた限局性小細胞がんに対する、PE療法と胸部放射線加速多分割照射同時併用に引き続く、CDDP/塩酸イリノテカンとPE療法を比較する第Ⅲ相試験(JCOG0202)の結果が待たれている。

2、小細胞肺がんED 病期

 前述のPE(CDDP/エトポシド)療法は、以前に行われていたCAV(シクロホスファミド/アドリアマイシン/ビンクリスチン)やCAV/PE療法に比べ血液毒性が軽度であり、1990年代以降、世界的に最も汎用されている治療である。

 2002年には、ED例に対するIP(CDDP/イリノテカン)療法の有用性が報告され(JCOG9511)、日本における現時点での標準治療として確立された。その後、海外で追試が行われた結果、PEとIPの治療成績は同等であった。IP療法は下痢の副作用があることにより、PS良好例では推奨されるものの、PS不良や高齢者では、PE療法または、CE療法(CBDCA/エトポシド)が選択されることが多い。

 また、イリノテカンの代謝に関与するUGT1A1の遺伝子多型と副作用が関係しており(UGT1A1*6および*28に変異があるとイリノテカンの代謝物であるSN38の血中濃度が上昇し、副作用が強くなる)、治療前の遺伝子多型の測定が副作用回避に有用である可能性が指摘されている。

3、新規抗がん剤

 アムルビシン(AMR)は、化学合成されたアントラサイクリン系薬剤であり、主として再発例に対する2nd line以降のレジメンとして使用されている。初回治療の有用性に関しては、ED未治療例に対しAMRとCDDPの併用第Ⅰ/Ⅱ相試験がわが国において施行され、奏効率87.8%、MST13.6ヵ月、1年生存率56.1%と非常に良好な成績が得られ、現在、IP療法との第Ⅲ相試験がJCOGで行われている。

 その他の新規抗がん剤で、小細胞肺がんへの効果が期待できるものには、ノギテカン、パクリタキセル、ゲムシタビンなどがあり、再発例に対して2nd line以降に使用される。

化学療法の今後

 新規抗がん剤と分子標的薬の開発により、この10年間に化学療法はその治療選択肢が広がり、肺がん患者の生存期間も以前に比べ延長してきた。今後も、新たなバイマーカーによる、さらなる個別化医療の実現が期待される。一方、現時点においては副作用のない化学療法は存在しえない。実地診療においては、副作用(リスク)とのバランスで期待される治療効果が変わってくる可能性があり、より慎重な説明同意のもとに治療を行うべきであろう。

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