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どうする胃がんの2次化学療法?
JCOG9912サブグループ解析の教訓

2009/06/09

TS-1の“敗者復活”の可能性は

 TS-1に耐性になったら、もうTS-1は使えないという考えは合理的だが、それを素直に受け入れられない事情もある。「一度耐性化したらTS-1は使えない」は、結果的に治療の選択肢の大半を失うことを意味する。そこで登場したのは、視点を変えて、TS-1に耐性になっても、TS-1を含むレジメンの可能性を追求するという試みだ。

 せっぱ詰まった結果、選択された破れかぶれの治療というわけではない。傍証となるのが、同じ消化器がんである大腸がんの化学療法だ。切除不能・再発大腸がんでは、FOLFOX(5-FU+LV+L-OHP)に耐性になってもFOLFIRI(5-FU+LV+CPT-11)が使われる(順番が逆になる場合もある)。つまり、「5-FUをベースとするレジメンに耐性化しても、別の5-FUレジメンが効果を発揮していることが広く認知されている」と藤井氏は強調する。その考えを胃がんに置き換えて、TS-1を含むレジメンが無効になっても、別のTS-1レジメンが使える可能性を検討するというものだ。

 実際に進行中の試験研究が、表1に示した「TS-1による治療を受けて無効になった患者にCPT-11を上乗せしたレジメンを使用する」JACCRO GC-05だ。OGSGもCPT-11、TXLのそれぞれを単剤で使うアームとそれぞれにTS-1を併用させる、合計4つのアームを比較している。

 ただし、異論もある。FOLFOX耐性後のFOLFIRIの有効性がCPT-11単剤と同等であり、レジメンが代わっても5-FUへの耐性が解決されていなかった可能性がある。またCPT-11とTS-1の併用ではTS-1耐性対策の鍵を握るCPT-11の用量が単剤レジメンと異なることから大腸がんと同列に論じることはできないという意見もある。

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“ウィークリー・パクリ”が事実上の標準

 OGSGの試験は第Ⅱ相となっている。第Ⅲ相に進めるほどの医学的なエビデンスが不足しているという判断からだと大阪医科大学化学療法センター長の瀧内比呂也氏は指摘する。

 「実は、2nd lineをめぐる臨床研究を進めるにあたっては根本的な問題がある」と同氏は語る。標準のレジメンが定まっていないことだ。表1に示した試験のほとんどがCPT-11を対照アームに設定しているが、2nd lineにCPT-11単剤使用を標準とするエビデンスが存在しないのだ。瀧内氏は、こうした傾向に「対照が定まらない上で臨床試験を設計することはできないのではないか」と疑問を呈する。

 瀧内氏自身が関係して現在進行中のJCOG0407が重要だと語った。JCOG0407は、初回化学療法不応(フッ化ピリミジン系抗がん剤を含む化学療法に対して不応)の腹膜転移を有する進行・再発胃がんに対するbest available 5-FU療法 vs. TXL少量分割療法(ウィークリー・パクリタキセル)によるランダム化第II相試験。現在のところ、TXLには第Ⅱ相試験までのエビデンスしかないが、それでもCPT-11よりも豊富な実績があると瀧内氏は指摘する。この試験でTXLの位置づけをはっきりさせてから、第Ⅲ相試験を組むべきだというのが同氏の考えだ。

 ではその結果が出るまでに何を行うべきか。SPIRITS試験では2nd lineの半数以上でTXL単剤が使用されたことからも多くの施設はCommunity standardとしてウイークリー・TXLを選択していると見られる。「現在までに得られているエビデンスから判断するにそれは間違った選択ではない」と瀧内氏はいう。しかし、それも、臨床研究が進展するまでの間ではという条件がついているといえそうだ。

術後生存期間は再発リスクを反映

   黒川氏らは、胃がんのD2郭清群とD3郭清群のOSを比較した第Ⅲ相臨床試験JCOG9501に参加した23施設の施設間差も調べている。JCOG9501では、D2郭清、D3郭清でOSに違いがなく、D2郭清の有用性が確認された。

 D2郭清手術による5年生存率は、75.1~58.0%と17%の違いが認められた。上位3施設と下位3施設を除いて比較した場合は、その差は6%に留まり、極端に良い施設と悪い施設とがあることが明らかになった。しかし、全体のばらつきは、化学療法の臨床試験JCOG9912の方が大きかった。

 興味深いのは、外科手術のOSと無再発生存期間(RFS)との関係。JCOG9912では、OSとPFSとの間で相関が認められなかったが、外科手術のJCOG9501では、RFSは69.3~52.5%で施設間差は16.8%。つまり、OSの施設間差はRFSの施設間差とほぼ一致していた。言い換えると、RFSが長くなるほどOSが長くなる傾向が明らかになった。ちなみに、JCOG9501では、術後補助化学療法は行われていない。ということは、OSの長短は手術の巧拙が反映した結果と結論することができそうだ。

 これら解析結果は、施設の名称は伏せられて学会発表されたが、希望する施設に限ってはその施設の順位を通知する方針が取られた。最終的に、すべての施設が通知を希望したという。



FLAGS 試験でTS-1 は5-FU に勝てなかったが…

   FLAGS試験は、世界の多施設で行われた切除不能・進行再発胃がんを対象にTS-1+CDDP(SP療法)と静脈投与5FU+CDDP(FP療法)を比較する無作為化比較試験。主要評価項目は全生存期間における優越性だった。2008年に報告された試験の結果、生存曲線はSP療法がFP療法を上回っていたが、有意差は示せなかった。米食品医薬品局(FDA)は、合剤の場合は対照よりも上回る成績をあげること(優越性の証明)を新薬承認の条件としている。合剤であるTS-1はこの条件をクリアできなかった。

 優越性の証明を目標にした臨床試験で非劣性の証明に終わったが、日本で使用する場合を考えると、TS-1の価値が否定されるわけではないと、藤井氏は語る。「FDAのクライテリアを突破できなかったとしても、有用性は確認されたわけで、日本国内で使用するのであれば、十分といえる」(藤井氏)。瀧内氏も同意見だという。「利便性と毒性の低さでは、SPはFPを上回っている」(瀧内氏)。

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