Cancer Review on WEB

2009/6/9

どうする胃がんの2次化学療法?

JCOG9912サブグループ解析の教訓


進行性胃がんに対する化学療法の比較第Ⅲ相試験(JCOG9912)に参加した22施設に全生存期間(OS)で施設間差が出現して話題になっている。1次治療(1st line)が無効になった後の2次治療(2nd line)の選択の違いが反映した結果と考えられる。臨床家を悩ませる進行胃がんの2次、3次をどうすべきか。現場の試行錯誤を通して、この分野の将来を展望する。


国立病院機構大阪医療センター外科の黒川幸典氏

 JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)に参加した医療機関といえば、国内屈指の医療水準を誇るがん治療を行う医療機関ということができる。しかし、その中にも施設間格差があることが国立病院機構大阪医療センター外科の黒川幸典氏らが行った胃がんの化学療法をめぐる臨床研究JCOG9912の付随研究で明らかになった。

 JCOG9912とは、進行胃がんに対して5-FU(n=234)vs.CPT-11/CDDP(n=236)vs.TS-1(n=234)の3レジメンの治療効果を比較した試験で、3レジメンに全生存期間(OS)に差が認められず、それぞれの非劣性が確認された。この結果は、2007年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)では口演演題に採択されるなど、国際的にも高く評価された。

 黒川氏は、この試験に参加した22施設のOS、無増悪生存期間(PFS)、治療有効期間(TTF)を推定し、それらに施設間差があるかどうかを検討した。生存期間中央値(MST)を推定するにあたって、年齢、性別、全身状態(PS)などの背景因子を調整した。

(画像をクリックすると拡大します)

 5-FUの使用例で見ると、OSでは最も成績が良好だった施設は13.3カ月を記録したが、最も悪い施設は8.3カ月と5カ月の差が出た(いずれもMST、図1)。

 こうした施設間差が出現する理由として登録症例の多寡、腫瘍内科担当スタッフ数、担当スタッフの化学療法経験年数などの違いが影響しているなどの可能性が考えられたが、黒川氏が東京大学臨床試験データ管理学の山口拓洋氏らの協力を得て進めたメタ回帰分析の結果は、いずれの因子とも相関関係が認められなかった。では施設間差が出現した原因は何か。

 黒川氏は、OSとともにPFSに注目している。前述のようにOSの差は5カ月に達したが、PFSでは最も良かった施設が3.4カ月、最も悪かった施設で2.4カ月とわずか1カ月の差に留まった。つまり、施設間差はPFSでは比較的小さいがOSになると拡大していたといえる。その理由を黒川氏は5-FUが無効化した後に、どのような治療を行うか、すなわち2nd line、3rd lineの質的な差が出た可能性があると説明する。「今回の試験では、1st lineについては方法が統一されているが、2nd line以降は各施設の裁量に委ねられている。この2nd line以降の治療の質的な違いがOSに反映されたと見ていいのではないか」(黒川氏)。


大阪医科大学化学療法センター長の瀧内比呂也氏

 「大切なのは、1st lineから2nd lineへの切り替えのタイミング」と指摘するのは、大阪医科大学化学療法センター長の瀧内比呂也氏だ。理想的には、1st lineを行い、PD(進行)になった直後に2nd lineへと切り替えたい。問題はその見極めだ。定期的な腫瘍マーカーの計測とCT検査が推奨されるが、それでも困難。とりわけ、腹膜播種などがあると、いっそう難しいものとなる。

OSの差は2nd lineで出た

 JCOG9912のサブグループ解析は、治療の最も大事な有効性指標であるOSに大きな施設間差があることを浮き彫りにした。この結果がもたらす意義は2つあるといえよう。1つはJCOGに参加するという日本の“エリートがん医療機関”の中にも存在する格差が明らかにされたこと。もう1つは、PFSやTTFの違いは小さいのにOSになると拡大するという事実から、1st lineが無効化した後に行う治療、言い換えると「2nd line以降における治療格差の存在が示唆された」(黒川氏)ことだ。

 現在のところ、1種類の化学療法を続ければ、それが無効化することは避けられない。そこで、それ以降の治療をどのように設計するかが、患者のOSを延長させる上での鍵となる。JCOG9912ではPFSはTTFに差がつかなかった。極論すると1st lineは誰が行っても違いは出ないが、2nd line以降では差が出る。となると、2nd line、3rd lineの化学療法こそが、メディカルオンコロジストとしてのプロの腕の見せどころということができるだろう。

 それでは、2nd lineをどのように考えればいいだろうか。

 実は、現在のところこの問いかけに対する十分なエビデンスを伴った解が存在しない。後で紹介するように、国内ではいくつか臨床試験は始まっているが、それが終了して、生存期間が明らかになるには、まだ2年から数年はかかりそうだ。ところが、目の前には患者がいる。2年間も待っている余裕はない。限られた情報からどのように2nd lineを組んだらよいのだろうか。

(次ページに続く)
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