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化学療法アップデート
薬剤性皮膚障害への対策
新規分子標的治療薬の副作用を中心に

2009/04/30

EGFRの発現は皮膚の機能維持に重要

 EGFRは多くの腫瘍で過剰発現が見られるが、正常皮膚(図2)においては表皮基底細胞、脂腺(皮脂腺)細胞、外毛根鞘細胞、平滑筋細胞、エクリン汗管真皮内導管などに分布し、皮膚の増殖や分化に関連していると考えられている。EGFR系阻害剤の皮膚障害発症機序については不明な点が多いが、EGFR系阻害剤が投与されることによって皮膚の活性化EGFRが著しく減少すると角化異常が起こり、角質の菲薄化や不全角化などが生じると考えられている。

 特に角栓の形成の結果毛包は炎症を起こし、ざ瘡様皮膚炎が発生すると推測できる。ざ瘡様皮膚炎は最も出現頻度の高い皮膚反応であり、セツキシマブの場合、典型的な例においては投与1 週間から2週間で出現し、2週程度で軽快する。次に多く出現するのは皮膚乾燥や亀裂である。これはセツキシマブ投与開始後5週目ころに始まり、長期にわたって継続する。さらに投与開始8週前後からは爪囲炎も起こり始める。分子標的治療薬によって起こる爪囲炎は手足の爪周囲に多発するのが特徴である。

 エルロチニブにおいても皮膚症状の出現時期は類似しており、国内第Ⅱ相臨床試験時のまとめでは、各有害反応出現までの日数の中央値は発疹(主にざ瘡様皮膚炎と考えられる)6日、皮膚乾燥23日、爪囲炎49.5日であった。

皮膚障害の種類について

 EGFR系阻害剤における皮膚障害を表すいわゆる“Rash“ という用語は実に多くの種類の皮疹を含んだ単語であり、発疹学で定義されている皮疹のどれか1つに簡単にあてはめることができないものであるが、この“Rash“ の中には主にざ瘡様皮膚炎と脂漏性皮膚炎が含まれているようである。そのほかには皮膚乾燥、ざ瘡痒症、爪囲炎の出現頻度が高い。ただし、その程度はGrade 1、2の軽いものがほとんどで、薬剤の処方の再検討を迫られるようなGrade 3のものは稀であるのが特徴である。このため休薬・減量からさらには中止せざるを得ないケースというのは実際には非常に少ない。

代表的な皮膚障害と症状マネジマント

 前に述べたように皮膚障害の中で、特に頻度が高く、重要なのはざ瘡様皮膚炎と脂漏性皮膚炎である。これに皮膚乾燥(乾皮症)、爪囲炎をあわせた代表的な皮膚障害と治療・処置の方法についてまとめたものを図3に示す。この中には皮膚病の一般診療における皮膚科医の常識からやや逸脱するものがいくつかある。

 それは、“Rash” をはじめとするこれらの皮膚障害が皮膚病ではなく、癌治療に伴う皮膚反応として出現していることに起因する。皮膚および皮膚付属器に見られるEGFR の分布から考えてEGFR 系阻害剤の全身投与の影響が皮膚に現れるのはある意味では仕方のないことである。目標とするのは、皮膚障害に対する迅速な対応と症状の軽減による患者QOLの改善であり、そのことによって癌治療ができるだけ負担の小さい形で継続できることが最も優先されるべきことと考えるのが現実的であろう。

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