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化学療法アップデート
薬剤性皮膚障害への対策
新規分子標的治療薬の副作用を中心に

2009/04/30

 新たに登場した分子標的治療薬の中には、従来の殺細胞型抗癌剤とは異なる皮膚障害を副作用として持つものが多い。したがってそれら薬剤の使用にあたっては、皮膚障害の早期発見と対処が重要である。薬剤性皮膚障害が出現した場合、どのような注意が必要となるか、日常的に多くの症例に接している筆者に解説をお願いした。

国立がんセンター中央病院皮膚科医長 山崎直也氏


従来の抗癌剤治療から 分子標的治療薬の時代へ

 癌化学療法は強力な新規抗癌剤の開発とともに進歩してきた。例えば1980 年代の代表的な抗癌剤は白金製剤であるシスプラチンであり、1990 年代の代表としてタキソールタキソテールといったタキサン系の薬剤を挙げることができる。

 抗癌剤は、より治療効果を上げることを目指して多剤併用療法、大量化学療法放射線化学療法といった投与法の工夫がなされてきた。このような従来からの殺細胞型の抗癌剤の使用によって起こる皮膚障害としては、中毒疹として現れる広い意味での“アレルギー反応”と抗癌剤の“ 血管外漏出によって局所で起こる反応” の2つが代表的なものであった。

 最近、分子生物学の進歩に伴って癌細胞の増殖のメカニズムが徐々に解明され、その知見をもとに多くの新規分子標的治療薬が開発されている。分子標的治療薬は、癌種に特異的であったり、癌細胞が持つ標的分子に特異的な作用を有するため、高い抗腫瘍効果ばかりではなく、正常細胞に対する毒性が低いものになることが期待されている。

 確かに分子標的治療薬においては従来の抗癌剤の最も代表的で、注意すべき有害反応であった骨髄抑制が問題とはならなくなっている。一方で、これまでは見られなかったような皮膚障害が高頻度に出現することが明らかとなってきた。

 上皮成長因子受容体EGFR)ファミリーの分子はシグナル伝達経路を構成し、細胞内反応において主要な役割をはたしていることが知られている。EGFRは大腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌などにおいて高頻度に発現が認められているため、この経路を標的とする新規薬剤の開発が注目されている。わが国においてはゲフィチニブエルロチニブといったEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が非小細胞肺癌に対する治療薬として発売され、最近ではEGFR に対するモノクローナル抗体であるセツキシマブが大腸癌を対象に使われ始めた。これらの薬剤は特徴的な皮膚障害が高頻度に出現することが知られており、皮膚障害とその症状マネジメントは、原病の治療を行う上でも重要である。

EGFR系阻害剤によって起こる 皮膚障害に対する考え方

 抗癌剤に限らず、薬疹、中毒疹においては、原因薬剤を中止することが原則であり、まず最初に取るべき措置であるといえる。さらに、原因薬剤に感作され、2度目の投与によってより重篤な状態が引き起こされることがある。こうした危険を考慮して、薬剤投与を再開するとしても慎重な判断が必要とされる。

 これに対しEGFR系阻害剤によって起こる皮膚障害は、この薬剤の継続、すなわち本来最も重要な癌の治療を継続しながら、皮膚の症状のコントロールを試みることができるところが大きな特徴である。また、エルロチニブの場合、図1に示すように皮膚障害の程度と癌の治療効果の間には相関があり、皮膚障害の程度の強いほど、癌の治療効果が良いと報告されているが、セツキシマブについても同様のことが言われている。

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