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インタビュー
麻酔科医辞職問題で反省 独自の人材育成に注力したい
国立がんセンター中央病院長 土屋了介氏

2009/01/15
日経メディカルCancer Review

――麻酔科といっても、手術麻酔と緩和医療とでは異なったキャリアパスであるのに、国立がんセンターでは区別されていなかったということですね。

土屋 今まで区別していなかったのは国立がんセンターに限らないと思いますが、これから医療の世界全体で、手術の麻酔と緩和医療との違いは今以上に鮮明になっていくと思いますね。これからは両方を同じ比重で勉強するという先生は少なくなっていくのではないでしょうか。緩和医療という学問ができあがりつつありますので、最初から緩和医療を志す医師が増えてくると思います。

 ですから、今回の事態を奇貨として根本的に問題解決を図っていくためには、国立がんセンターで独自に人材を育んでいくことが必須と結論しました。宮下先生にはそこを期待していますし、彼自身それをやろうと非常に燃えています。

 宮下先生が来て、真っ先に着手したことが現場の安全管理です。その次に彼が考えたことが、麻酔の教育病院として成り立たせるためには何が必要かということです。ここには循環器の専門家がいませんが、そういう知識や経験が必要な場合もありますから、ほかの施設と連携してカリキュラムが組めないか。そういうことを考えてもらっています。

全ての若い医師に緩和医療を経験してもらう

――緩和医療に注力されるということでしたが、現在の緩和医療は終末期に限定されず、治療の早期から取り入れるべきとWHOも提言しています。

土屋 内科でも外科でも緩和医療について最低限の知識を持っている必要があります。患者さんが、苦しみながらがんと闘うということは許されませんからね。そこで、的場先生に緩和医療のカリキュラムを作ってもらっています。
 
 疼痛緩和は時間をかけて勉強していく必要がありますから、緩和のレジデントコースで一部麻酔科をローテーションするというような形での勉強が増えると思います。逆に麻酔科へ入った医師が、「緩和にはどういう患者さんにニーズがあるのか」をローテーションの一環として病棟で勉強するということも必要になると思いますね。

 これから医学教育で必要なことはクロスオーバーです。緩和も麻酔も外科も化学療法も、一通り勉強するシステムを作ることですね。チーム、チームというけれど、相手の立場に立って考える知識や経験がないとそれも実現しない。それが基本の精神です。

 それにレジデントを教育すればいいのかという問いもよく聞きますけど、答えは「はい」です。若い人が新しい知識を得て、現場に入る。ベテランの先生に向かって、「先生、それは違います。最近の緩和はこうですよ」と言えば、それでおしまい。「先生、それは古い」と若い人に言われることが一番、ぐさっとくる(笑)。だから一番下の教育がとても大切です。毎年、行っていけば、様子は5年で全く変わります。

――レジデントは今年は定員割れしましたが。

土屋 2次募集をかけます。今はインターネットの時代で情報の伝達が早い。「あそこは麻酔科医がいなくて手術ができない」という情報が研修医の間に広がった。でも、宮下先生の方針が広まれば、2次募集には沢山の応募があると思います。「早く応募しないと席が埋まっちゃいますよ」と言いたいくらいです。

 もちろんこれから、努力しなければいけませんが、努力しがいがあるなという手応えを得ています。おそらく来年の今頃はもっとにこやかにインタビューに答えられていると思います。

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