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国立がんセンター研究所・ゲノム構造解析プロジェクトプロジェクトリーダー 柴田龍弘 氏
国際がんゲノムコンソーシアムが始動がんの遺伝子異常のカタログ作りに挑む
〔ミニインタビュー〕

2008/11/29
日経メディカルCancer Review

――日本人にも多い肺がんや大腸がんが入っていないようですが。

柴田 肺がんと大腸がんについては先行している研究グループがあります。NIHが中心になって2年前に開始した「がんゲノムアトラス計画」(The Cancer Genome Atlas;TCGA)では肺がん、脳腫瘍、卵巣がんについて、がん化に関係する遺伝子のリストアップを開始しています。同じく米国のダナファーバーがん研究所やマサチューセッツ工科大学とハーバード大学傘下のブロード研究所のグループも肺がんのゲノム解析をスタートさせています。

また大腸がんではジョンス・ホプキンス大学のグループが精力的に研究を進めています。ただし、肺腺がんにおけるEGFR変異のように、同じがん種でも人種や環境因子等の違いによってゲノム異常の頻度が異なる可能性がありますので、国際共同研究の中でそういった疫学的背景を考慮した共同解析の必要性についても議論されることになると思います。

塩基配列技術の高速化が追い風

――2001年にヒトゲノムプロジェクトが終了しました。これはヒトの遺伝子の塩基配列をすべて決定する国際共同プロジェクトでしたが、ICGCはヒトゲノムプロジェクトのがん細胞版という理解でよいのでしょうか。

柴田 関連は深いといえます。オンタリオがん研究所の所長でICGCの中心的役割を果たしているトム・ハドソン氏はヒトゲノムプロジェクトにおいて重要な貢献をしています。ヒトゲノムプロジェクトの成功も遺伝子の塩基配列決定技術の革命的な進歩が大きな要因となりました。

しかし、それでも10年という時間を要したわけで、あの方法をがん1つひとつに応用するには時間的にもコスト的にも無理があります。最近になって次世代型の塩基配列解析技術が登場したことがICGCの追い風になっています。

――次世代型解析装置の性能はそれほど高いものですか。

柴田 実用化した最新の装置では、ヒトゲノム全塩基配列に相当する30億塩基対を1週間以内で解読することができます。しかもその解読スピードはまだまだ早くなると予想されています。ただし、読み取った配列情報を隙間無くきちんと正しく並べるためには15回~30回程度は重複して読み直す必要があります。

――それでも、ヒトゲノムプロジェクトの装置に比べると格段の進歩ですね。

柴田 こうした装置がすでに英国のサンガー研究所や中国の北京ゲノムセンターなどの大規模ゲノムセンターには30台ほど入っているそうです。日本では理化学研究所や東京大学などにすでに導入されていますが、今後国内の研究所の中でも導入するところが増えるのではないでしょうか。

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