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国立がんセンター研究所・ゲノム構造解析プロジェクトプロジェクトリーダー 柴田龍弘 氏
国際がんゲノムコンソーシアムが始動がんの遺伝子異常のカタログ作りに挑む
〔ミニインタビュー〕

2008/11/29
日経メディカルCancer Review

肝臓がんや膵臓がんなど主要ながんのゲノム異常を網羅的に解析して、カタログ化しようという国際プロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム」(International Cancer Genome Consortium;ICGC)が本格的に動き出した。このほど各国が解析を分担するがんの種類を決定、本格的な作業に着手したもの。日本から参加する国立がんセンター研究所(東京・中央区)のゲノム構造解析プロジェクトのプロジェクトリーダーである柴田龍弘氏に、プロジェクトの意義と意気込みを聞いた。(聞き手:小崎丈太郎=日経メディカルCancerReview編集長)


――がん研究におけるゲノム研究の位置づけについて教えてください。

柴田 がんのほとんどすべてに遺伝子(ゲノム)の変異が生じています。こうしたゲノム変異が正常な分子経路を破綻させ、無秩序な細胞増殖や浸潤・転移といった悪性形質を起こすことがわかっています。
遺伝子に生じた変異ががんの原因であることはよく知られていますが、それら変異のパターンは無限にあるわけではありません。

――変異のパターンは有限であると。

柴田 がんで見られるゲノムの変異には染色体欠失、増幅、転座、点突然変異などが知られていますが、いわゆる“driver mutation”と呼ばれる、それぞれのがんに特徴的で機能的に意味のある複数のゲノム異常が、がん細胞の無秩序な増殖・浸潤・転移につながると考えられています。そうなると、ゲノム変異を調べ上げることで、それぞれのがんで重要な役割をしているゲノム異常カタログを作っておくことが可能になります。

最近注目されている分子標的治療のいくつかはこうしたゲノム異常によるがん遺伝子産物を標的としておりますし、がん細胞の中でどのようなゲノム変異が起こっているかの全体像がわかっていれば、それに応じた新しい治療法の開発や選択がもっと進むのではないかと期待されています。

柴田 龍弘 氏

国際分担が決定日本は肝臓がんを担当

――国際がんゲノムコンソーシアム(International Cancer Genome Consortium;ICGC)について教えてください。

柴田 ICGCには今のところ8カ国11の研究機関が参加しています。更に、それ以外の複数の研究機関がICGCへの参加について検討を進めています。参加国がそれぞれ臨床的に重要ながんを選び、それらがんにおけるゲノム変異の全貌を明らかにするための国際共同プロジェクトとして2008年4月に発足しました。事務局はカナダのオンタリオがん研究所にあります。

各メンバーは、ICGCの定めたデータ収集・解析に関する共通基準に従い、特定のがん50種におけるゲノム異常を各500症例のがん試料について解析していく予定です。日本からは理化学研究所と国立がんセンター研究所が共同で参加しています。また、ゲノム解析新技術の開発や評価については、東京大学先端科学技術研究センターにもご協力をお願いしております。

それぞれのがん細胞のゲノム塩基配列をすべて決定することが最終的な目標ですが、余裕があれば、更に同一検体の発現プロファイルの解析やメチル化異常解析についても検討することが推奨されています。2008年11月15日~17日まで米国国立がん研究所(NCI)が幹事となって第1回ICGCワークショップが開催され、参加各国が最初に分担するがんの種類が以下のように決定されました。

①オーストラリア保健医学研究会議未定
②カナダ・オンタリオがん研究所膵臓がん
③中国がんゲノムコンソーシアム胃がん
④フランス国立がんセンターアルコール関連肝臓がん、HER陽性乳がん
⑤インド科学技術省バイオテクノロジー局口腔がん
⑥理化学研究所、国立がんセンター研究所肝炎ウイルス関連肝臓がん
⑦スペイン科学イノベーション省慢性リンパ性白血病
⑧英国ウェルカムトラスト財団、英国サンガー研究所乳がん(数種の亜種)

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