Cancer Review on WEB

2008/5/16

ミニ・インタビュー

サイバーナイフは体幹部がんにも有望

新緑会脳神経外科横浜サイバーナイフセンター院長・佐藤健吾氏


写真@柚木裕司

 精密な放射線照射をCT、MRIなどから得られる3次元画像情報とロボット技術を利用して行うサイバーナイフが注目されている。現在、がん治療への利用は脳腫瘍や頭頚部がん、脳への転移がんに限られているが、体幹部のがんにも適応拡大される可能性が出てきた。世界で第1位の治療数を誇る医療機関が横浜の新緑会脳神経外科だ。同院長の佐藤健吾氏にサイバーナイフの体幹部がん治療への可能性を聞いた。(聞き手:小崎丈太郎=日経メディカルCancerReview編集長、写真:柚木裕司)
 

――そもそもサイバーナイフとは。

佐藤 放射線治療装置の一つですが、患者の動きに対応したピンポイント照射を行うために、体の動きを検出して正しい位置に照射することを目的に開発された装置です。コンピューター制御の工業用ロボットとリニアック装置(直線加速器)を組み合わせた「病変追尾システム」によって、任意の位置から照射することができます。日本でこのサイバーナイフを導入している医療機関は20施設ほどあります。

現在当院で使用しているタイプは、6つの関節を有するロボットアームに小型化されたリニアックが装着されていて患者の周囲を自由自在に動きます。最大1200方向から放射線の照射が可能です。


ガンマナイフとの違い

――患者の動きへの対応が放射線治療の課題でした。

佐藤 1cm以内の動きであれば瞬時に正確に修正して照射することが可能です。また従来の定位放射線照射装置は侵襲性のあるフレーム固定が必要であったため、大きな病変でも1回照射で治療をせざるを得ませんでした。サイバーナイフはフレーム固定が必要ではないため、数回に分けて分割治療することが容易になり、合併症を少なくすることができます。

――ガンマナイフとどこが違うのですか。

佐藤 ガンマナイフは非常に優れた治療装置ですが、正確な位置情報を確保するためにフレーム範囲に限界が生じます。また対象となる腫瘍の大きさでもガンマナイフが15ccが上限であるのに対して、サイバーナイフは40cc~100ccを超える腫瘍まで治療が可能です。

サイバーナイフを開発した米国Stanford大学脳神経外科教授のJohn Adler氏はスウェーデンでガンマナイフ研究に携わっていました。ガンマナイフの利点を活かしつつ、その課題を解決できるシステムとして考案したのがサイバーナイフです。米国食品医薬品局(FDA)の認可を得てStanford大学で治療が始まったのが1994年ですから、すでに10数年の使用経験があります。

――日本国内の現在の適応はどのようなものですか。

佐藤 頭蓋内、頭頚部領域の良性・悪性腫瘍を対象としています。がんでは原発性脳腫瘍、転移性脳腫瘍です。当院で治療した1600例を集計すると、48%は転移性脳腫瘍で最も多かったです。グリオーマが5%、グリオブラストーマが3%などでした。

高齢者のがん治療に有望な武器

――頭蓋内、頭頚部領域では実績がありますが、それ以外の治療の可能性をどのように考えていますか。

佐藤 非常に高いと思います。とりあえず脊髄などの治療などは是非行いたいと思います。欧米やアジアの国々では体幹部の治療が日常的に行われています。サイバーナイフを世界で約120台が稼動していますが、製造元の米国Accuray社が今年1月にまとめた世界の治療実績では、体幹部治療の件数が頭頚部腫瘍の件数を超えたということでした。

日本国内では体幹部への照射について薬事の承認が得られていないのですが、既に2000年にAccuray社が適応拡大を申請しています。近く承認される可能性が出てきたようです。そうなれば本当に待ちに待った承認です。

――脳腫瘍以外のがんの治療も期待できますか。

佐藤 最も重要なのは高齢患者への応用です。70歳を過ぎて発見された場合、侵襲性の高い治療をあきらめざるを得ないケースもあります。そのような症例には非常に大きな武器になります。全身状態が多少悪くても照射できるという意義は大きいと思います。


アジアのセンターを目指す

――新緑会脳神経外科はサイバーナイフの治療件数で世界第1位だったそうですね。

佐藤 当施設では、2007年に639例の治療を行いました。これはサイバーナイフの治療数としては世界第1位です。1台の装置で対処できる症例数も上限に近づいていますので、もし適応拡大されたら、現在は治療を行っていない土曜日、日曜日にも稼動させることを計画しています。

発明者のAdler先生にも励まされているのですが、将来はサイバーナイフの研修を行うセンターになりたいと考えています。日本国内に限らず、アジアの国々からも受け入れられるような施設が目標です。サイバーナイフによる治療を行うためには、医師だけではなく、放射線技師や品質管理を行う放射線物理師も欠かせません。そうしたスタッフも研修できるような施設をつくりたいと考えています。

(編集部より:新緑会脳神経外科横浜サイバーナイフセンターについては、日経メディカルCancerReviewの秋季号で詳しく紹介します)

(日経メディカルCancer Review)

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