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ミニ・インタビュー
展望ASCO2008 分子標的薬の“評価技術”に注目しています
国立がんセンター東病院・副院長 西條長宏氏

2008/03/28
日経メディカルCancer Review

日本では2月に術後補助療法での使用が承認されたばかりですが、ASCOでは術前化学療法が注目されているわけですね。

西條 婦人科がんでは卵巣がんに対し、日本のJGOG(非特定営利活動法人・婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構)が行ったパクリタキセル/CDDPの試験が報告される予定と聞いています。通常のレジメンと投薬間隔を短くしたレジメンの比較試験で、投薬間隔を短くする方が有効という成績が出たようです。

小細胞肺がんでSWOGがJCOGを追試

西條 肺がんでは進行非小細胞肺がんでセツキシマブと白金製剤との併用が白金製剤単独よりも生存期間が延長されたというFLEX試験のプレスリリースがメーカーから出ています。これが総会では議論されるのではないかと思います。
 
最も注目しているのは、米国の臨床試験グループSWOG(Southwest Oncology Group)が進展型小細胞肺がんで行っているイリノイテカン/CDDP vs.エトポシド/CDDPの結果ですね。1995年11月から99年1月までJCOGが患者登録を行った第Ⅲ相無作為比較試験JCOG9511と全く同じスケジュールでSWOGが実施しています。

もし、再現性がないという結論になったら、JCOG9511は否定されてしまうことになってしまいますからね、注目せざるを得ないですね。

マイクロアレイは正念場

分子標的治療薬を有効に使っていくためには、適切なバイオマーカーを見出し、それを使って有効性が期待できる患者を選択することが重要といわれてきました。ASCOではどうでしょうか。

西條 バイオマーカーを捕まえる方法としてマイクロアレイを使って特徴的な発現をしている遺伝子を検出する方法がありますね。あの方法が本当に有効なのかどうか結論を出す時期に来ていると思います。

少なくとも臨床的に重要な薬剤感受性を事前に調べることができるかどうかは、慎重に議論していく必要があります。難しいのは、そのマーカーの有効性を実際に検証する臨床試験を組むことの難しさがありますけれど。

治療に結びつくものはどうですか。

西條 マイクロアレイで選ばれた遺伝子やその翻訳たんぱく質が治療の標的になった実績がこれまでのところ、ほとんどない。興味深いことに1つの遺伝子に狙いを定めてきたものだけが生き残っている。EGFRやVEGFの阻害剤が実用化していることが象徴的です。

分子標的治療薬というコンセプトはできましたが、実際の開発のハードルは低くないということですね。

西條 ソラフェニブやスニチニブの腎細胞がん、肝細胞がんなどの状況を見ても分かるように、分子標的治療薬の登場でその治療分野がまったく新しい局面を迎える例があります。一方で、これまでの細胞を殺すタイプの抗がん剤とは異なる分子標的治療薬ならではの開発コンセプトがとても重要になります。
 
とにかく、まったく異なる作用様式を持っているのです。試験管内でがん細胞を殺すわけではない化合物を選択して来ること一つを考えても、開発の難しさが分かりますね。メーカーからすれば、果たして第Ⅲ相試験に進めてもいいものかどうか、判断に迷うところだと思います。

動物実験から臨床試験の結果を類推することも現時点では成功していません。今までは、効果が期待できる患者を選択して第Ⅲ相試験を行うことは、あまり行われてきませんでしたが、これからはそういうプロセスが極めて重要になるでしょう。

そのためにもバイオマーカーが必要になりますね。

西條 抗体医薬ならば抗原をバイオマーカーにすればよい。トラスツズマブのHER2やセツキシマブのEGFR発現が良い例です。問題となるのは低分子のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)ですね。
 
非小細胞肺がんのゲフィチニブもEGFR遺伝子の変異の有無がバイオマーカーになるのではないかと期待されていますが、変異がない患者でも10%近い奏効率があることを考えると完璧なバイオマーカーとはいえません。
 
 EGFR遺伝子の変異があることはゲフィチニブに特異的な薬剤感受性マーカーというよりは、“化学療法全般についての感受性マーカー”ではないかという考え方も強くなっています。
 
また有効性を上回る有害事象が問題になり実際に臨床試験が停滞している分子標的治療薬もあるようです。優れたバイオマーカーが必要であることは確かです。分子標的治療薬の有用性を開発の早い段階で評価するにはどうしたらいいか。
 
 そのために必要な有効なバイオマーカーをどのように確立していくか。ASCO総会ではこうした点が議論されるものと期待しています。

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