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ミニ・インタビュー
展望ASCO2008 分子標的薬の“評価技術”に注目しています
国立がんセンター東病院・副院長 西條長宏氏

2008/03/28
日経メディカルCancer Review

世界のがん治療に最も大きな影響力を持つ医学会である米国臨床腫瘍学会(ASCO)総会。今年は、5月30日~6月3日までシカゴで開催される。そこで討議される結果によって、がん治療の教科書が書き換えられるといわれ、日本の臨床家からの関心も高い。昨年まで理事を務めるなど、同学会に造詣が深い国立がんセンター東病院副院長の西條長宏氏(写真)に、今年のASCO総会(ASCO2008)への期待と展望を聞いた。(聞き手=小崎丈太郎・日経メディカルCancerReview編集長、写真=清水真帆呂)


今年もASCO総会の開催が近づいてきました。どのような研究が注目され、議論があるのか、先生はどのように見ていますか。

西條 分子標的治療薬をどのように評価していくのかということが、ここ数年の世界のがん医療の最大の課題だと思います。ASCO2008の中心的な話題もそれになると思います。

セツキシマブの効果を左右する遺伝子変異

西條 進行結腸・直腸がんではEGFR抗体医薬のセツキシマブ(日本未承認、抗EGFR抗体、EGFR;上皮細胞成長因子受容体)をどう使うかが課題ですね。

FOLFOX(5-FU/ロイコボリン/オキサリプラチン)、FOLFIRI(5-FU/ロイコボリン/イリノテカン)、XELOX(カペシタビン/オキサリプラチン)にベバシズマブ(抗VEGF抗体、VEGF; 血管内皮細胞増殖因子)を加えたレジメン(がん化学療法のプロトコール)が、標準治療と認められています。これらにセツキシマブを併用した場合、生存期間を改善できるかどうかがトピックスになるでしょう。
 
また昨年のASCO総会では、FOLFIRIにセツキシマブを併用したCRYSTAL試験の結果が報告されました。生存期間が改善するという結果でした。がん遺伝子K-rasに変異がある患者では、セツキシマブの効果が限定的であるとの報告もあります。総会では、この点が明らかにされるのではないでしょうか。

K-ras遺伝子の変異が、FOLFIRI/セツキシマブの治療感受性バイオマーカーになるかどうかという話ですね。

西條 そうです。K-ras遺伝子変異はほかのレジメンでも有効性を事前に判断するバイオマーカーになるのではないかという報告があります。


ベバシズマブは膵臓がんに有効か

西條 食道がんでは、JCOGが行った5-FU/CDDP(シスプラチン)を術前に行う方法と術後に行う方法を比較した試験の結果が報告されます。結論からいうと、術前で行う方が生存期間の改善が見られたのですが、これは今年の日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)からの報告の中で最も重要なものになるでしょう。膵臓がんでは、ベバシズマブの評価が課題ですね。

ベバシズマブは膵臓がんについての有効性を証明できなかったのではないですか。

西條「ゲムシタビンにベバシズマブを併用しても生存期間が改善されなかった」という報告が一昨年にありました。そこで、ゲムシタビン/エルロチニブをベースにベバシズマブの併用効果を検討した比較試験が実施されています。

膵臓がんは予後が悪いがんの筆頭ですので、結果に注目したいですね。

西條 肝臓がんでは、昨年は分子標的治療薬のソラフェニブ(日本では腎臓細胞がんで承認)が大きく生存期間を改善したと報告されて注目されました。しかし、アジア人を対象とした研究ではなかった。アジア人ではどうかという点が重要だと思いますが、ASCO総会でも議論されるのではないでしょうか。


乳がんではトラスツズマブの術前治療は

乳がんではどのような点に注目していますか。

西條 乳がんについては、いろいろな臨床試験が動いています。全部挙げることはできませんが、選ぶとすればトラスヅマブを術前に使用した試験の結果ですね。多くの臨床家が注目しているはずです。

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