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ミニインタビュー
すい臓がん治療の打開のために研究を支援したい
PanCAN 代表兼CEO Julie Fleshman氏

2007/07/23
日経メディカルCancer Review

 欧米にはがん医療、がん研究を経済的に支援するNPO法人が多数存在し、医療や研究の動向に大きな影響を及ぼしている。そうした団体の一つで、難治がんの筆頭であるすい臓がんの支援団体であるPancreatic Cancer Action Network, Inc(PanCAN)の代表兼CEOのJulie Fleshman氏に今後の活動計画を聞いた。(聞き手:小崎丈太郎)

―― PanCANとはどのような組織ですか。

Julie Fleshman(以下、Fleshman) PanCAN(www.PanCAN.org)は、製薬会社、医療従事者、患者とパートナーシップを組んで、すい臓がん撲滅に向けて活動している団体で、1999年に設立しました。米国では年間3万7000人の新規すい臓がん患者が出ますが、十分な情報と治療を受けられていないという状況でした。それをなんとかしたいと、草の根ネットワークとして発足させました。

 主なミッションとして、研究の支援、行政への働きかけ、患者さんの闘病支援、教育とすい臓がんに関する社会的な啓発活動を行っています。すい臓がんの研究者24人に230万ドルの研究助成を行ってきました。また、患者さんやその家族から、医療に関る問い合わせを2万件以上受け付けています。本部は米国のカリフォルニア州にありますが、昨年日本でも活動を広げようとPanCAN Japanを日本支部として設立しました。

―― 6月に米国のシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)でも、すい臓がんに対する薬物療法の大規模臨床試験の結果が報告されましたが。

Fleshman いずれもネガティブでした。とりわけ、ゲムシタビン単独とゲムシタビン+cetuximab(抗EGFR抗体医薬)とを比較したSWOG S0205試験、ゲムシタビン単独とゲムシタビン+ベバシズマブ(抗VEGF抗体医薬)とを比較したGALGB80303試験ではそれぞれの強力な抗体医薬の上乗せ効果が確認できず、大変失望しました。これで、大きな試験が4つほど、たて続けにネガティブな結果が出たことになります。

―― すい臓がんは日本の医師の間にも閉塞感を強く感じさせるがんの代表ではないかと思います。

Fleshman すい臓がんの克服には今までとは全く異なった方法論が必要になっています。研究支援を一つの大きな柱とし、すい臓がんの根本的な解決策に向けてのアクションプランを立て、実施します。

―― プランについて具体的に教えてください。

Fleshman 8月にロサンゼルスで、米国内外のがんの専門家を集めて、すい臓がんをめぐる医学や研究の流れを変えるためにはどのような方向が最適であるのかを、2日間じっくり話し合う会議PanCAN Summitを開催します。専門家といっても、すい臓がんの専門家に限りません。むしろ、これまでのすい臓がんの専門家以外の専門家を、すい臓がんの研究にコミットするよう促すことに会議の狙いがあります。がんの医療には、ここ数年目覚しい成績を上げている乳がんや大腸がんがあります。こういった人々の知恵を借りたい。また、すい臓がんの治療成績を上げるには、超早期診断が欠かせません。現在の科学技術の力を結集して、すい臓がんの超早期診断はどこまで可能になるのでしょうか。これを徹底的に話し合います。

 また、「なぜすい臓がんになるのか、そして再発するのはなぜか?」 この答えは、遺伝子の変化のダイナミズムを追跡する技術抜きには語れません。近年、この分野の発展は著しいのですが、これをすい臓がん研究に取り入れたい。加えて、治癒を目指すのであれば、がん幹細胞という視点は避けて通れません。こうした専門家にも来てもらって、すい臓がんにその方法論を応用すると何が生まれるのかを討論します。

―― 日本からの参加者もあるのですか。

Fleshman 日本膵臓学会理事長の田中雅夫氏に推薦していただいた2人のすい臓がんの専門家をお招きします。すい臓がんの医療は大変厳しい状況にありますが、それを改善するきっかけになることを目指していますし、そう確信しています。

(PanCAN Summitの速報を本サイトに、詳報を日経メディカルCancerReview秋号に掲載する予定です。ご期待ください)

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