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学会トピック◎第34回日本環境感染学会総会・学術集会
「『だいたいウンコ』な経口第3世代セフェムは病院で採用すべきでない」のか?
「病院で第3世代経口セフェムの採用は必要か」Pros&Cons

「本当に経口第3世代セフェムの効果だったのか」

「病院で第3世代経口セフェムの採用は必要か」というテーマで、Consの立場から発表する大阪大学医学部附属病院の朝野和典氏。

 次に、Consの立場で大阪大学医学部附属病院感染制御部教授の朝野和典氏が発表した。はじめに、「処方権は医師の権利であると同時に責任でもあるため、医師個人の処方は許容されるべき」とした上で、「病院として薬剤を使用する場合には、病院としての責任を考慮することも必要である」と、病院における経口第3世代セフェム薬の問題を定義した。

 まず抗菌スペクトラムの観点から、経口薬で対処できる菌の中で、経口第3世代セフェム薬はグラム陰性菌、特に大腸菌などの腸内細菌科細菌やインフルエンザ菌に特に有用だといわれていることを提示した。そのため、「呼吸器感染症のうち、抗菌薬を投与することがある中耳炎や副鼻腔炎といった疾患のガイドラインでは、経口第3世代セフェム薬が第一選択の対象にならない」と指摘する。

 なお、サンフォード感染症治療ガイド2018では、中耳炎や副鼻腔炎などで第二選択としてセフジトレンとセフポドキシム プロキセチルが推奨抗菌薬に挙げられていることなどから、朝野氏は「第一選択として推奨されている感染症はあまりなく、第二選択としてあり得る薬剤という位置づけだ」と説明した。

 バイオアベイラビリティーについて朝野氏は、「経口第3世代セフェム薬はバイオアベイラビリティーがとても低いことは知られているため、経口第1世代セフェム薬がよく選択される。確かに、『吸収された分だけで効果が得られないこともない』ようだ。しかし、処方された人のうち、抗菌薬の効果によって治癒した人がどれくらいなのかは分からない。プラセボと比較しなければ、本当の効果は示せないだろう」との見方を示した。

 さらに、日本は経口第3世代セフェム薬の投与量も諸外国に比べて少ないことを指摘。例えば、セフジニル(セフゾン)の日本の投与量(重症用量)は100mg×3だが、海外の投与量は600mg×1となっている。セフジトレン(メイアクト)も日本の200mg×3に対し、400×2となっている。

 これらのことから朝野氏は、他のβラクタム系抗菌薬に比べ(1)抗菌スペクトラムとしてはグラム陰性菌に抗菌活性がある、(2)経口吸収性(バイオアベイラビリティー)が不良のため、感染病巣に十分量の抗菌薬が到達しにくい、(3)外来で第一選択薬となる感染症がほとんどない、(4)スペクトラムが広域のため、耐性菌の選択圧が強くなる、といった点を経口第3世代セフェムの特徴として挙げた。

「病院として効用とリスクを考えれば採用削除も妥当」
 続いて抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)の視点から、病院としての処方を考えたときの問題として、(1)重篤な有害事象、(2)AST活動の対象外の不適切な使用――が挙げられるとした。

 まず、重篤な有害事象について朝野氏は、「本当に必要な処方によって副作用が起こることは仕方がないが、不要な抗菌薬によって副作用が生じることは、病院としては回避しなければならない」と指摘。「AST活動の対象外の不適切な使用」については、「忙しいASTは経口薬まで手が回らず、活動の対象外となってしまうため、不適切な使用が起こる」との課題を示した。

 ピボシキル基を有する経口第3世代セフェムが重篤な低カルニチン血症を起こし、それに伴って低血糖症や痙攣などが起こること(参考)を挙げ、「病院の場合、全ての医師が感染症を専門としているわけではないため、リスクとなる」と話した。

 体内留置した人工物に起因する感染予防のためにメイアクト細粒(12mg/㎏/日)を11カ月内服していた10歳以下の小児が、低血糖による痙攣を来した事例を受け、大阪大学医学部附属病院のASTが院内外で経口第3世代セフェムの長期投与症例を調査したところ、1年間以上の長期内服症例が複数あった。いずれも骨髄髄膜瘤術後の膀胱尿管逆流で、再発予防目的で使用されていたため、ASTとして処方変更を依頼し、ガイドラインに沿ってセファクロル(商品名ケフラール他)に変更されたという。

 こうしたことから朝野氏は、「専門医がいないとこういうことも起こり得るが、ASTが全て確認するのは現実的ではない。AST活動が活発な病院でも、内服薬は野放しということも多いだろう。従来の慣習的な抗菌薬選択を防ぐためには、採用薬から削除するのも一手」と話す。

 実際に、同病院では2016年には一部診療科で主に「術後経口抗菌薬」の削除を実施。2017年に、セファレキシン(商品名ケフレックス)の採用に伴い、ある外科の術後経口抗菌薬をセフカペンからセファレキシンに変更した。2019年に前述のセフジトレン長期内服による低血糖事例が発生したことから、クリニカルパス内の経口第3世代セフェムを削除する方針が決まり、2019年4月以降には院内採用の全ての経口第3世代セフェムの削除を実現する予定だという。ちなみに、代替薬としてセファレキシンとクラブラン酸・アモキシシリン配合剤(オーグメンチン)を院内採用する。

 朝野氏は、「医師個人の処方の裁量は尊重すべきだが、非専門医が安易に抗菌薬を選択したり、長期にわたって使用している現状から、病院では医療安全と薬剤耐性菌対策の立場に立って、採用をやめるという判断も妥当である。必要な場合にも、代替となる経口抗菌薬が存在するため、採用をやめて困ることはない」と主張した。

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