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学会トピック◎第34回日本環境感染学会総会・学術集会
「『だいたいウンコ』な経口第3世代セフェムは病院で採用すべきでない」のか?
「病院で第3世代経口セフェムの採用は必要か」Pros&Cons

「主たる起炎菌では、耐性率は大きく増加していない」
 さらに感受性と耐性率については、薬剤感受性サーベイランス研究会の感受性測定の結果を挙げて説明した。肺炎球菌1万4815株からセフジトレンに対する耐性菌が分離された割合の推移を、2007年から2016年まで見て、中浜氏は「一部株数が少ない年には乱高下が起きているが、全体的には、小児、成人、高齢者のいずれにおいても、開業医株と病院外来株の耐性率が大きく増加することはなかった。同様に、インフルエンザ菌もセフジトレンには耐性化していない」と主張した。

 一方、「同時期のインフルエンザ菌に対するアンピシリン耐性率を見ると、開業医株は10年間で耐性株検出率が10%から60%に著増した」と話した。これは薬剤耐性菌のβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)の増加が主たる原因と考えられる。これについても中浜氏は「この間、経口第3世代セフェムの使用量は減少しているため、セフェム薬がBLNAR増加の誘因ではないことが示唆される」と示した。

 また、日本感染症学会から提示された「気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(案)」において、「実地臨床ではA群β溶血性レンサ球菌(GAS)による急性咽頭炎に対し、アモキシシリンでは効果が不十分な症例なども散見されることから、臨床上の課題になると記載されている」と指摘。2018年に改訂された小児急性中耳炎診療ガイドラインでも、インフルエンザ菌に優れる経口第3世代セフェムを中耳炎治療薬から外すことは患者の不利益であるとして、経口第3世代セフェムを従来通りガイドラインに記載したことを取り上げ、「直近の関連学会の提言やガイドラインにも、経口第3世代セフェムが推奨薬の中に提示されている」と話した。

 日本でもよく引用されるサンフォード感染症治療ガイド2018では、中耳炎や咽頭扁桃炎、急性副鼻腔炎で、セフジトレンやセフポドキシム プロキセチル(バナン他)を中心に経口第3世代セフェムが推奨されている。さらに肺炎でも、エンピリック治療のある条件下では経口第3世代セフェムが推奨され、インフルエンザ菌やモラクセラ菌による肺炎に対しても第一選択薬のグループに推奨されていることなどを挙げ、「海外でも経口第3世代セフェムの臨床的有用性は認められている」とした。

「まずは抗菌薬の適正使用推進が最優先」
 副作用の観点としては、経口第3世代セフェムでもたびたび問題視される低カルニチン血症を挙げた。低カルニチン血症を起こす恐れがある、ピボキシル基を有する抗菌薬としては、セフジトレンなど3つのセフェム薬とテビペネム(商品名オラペネム)が該当する。ただし中浜氏は、「セフジトレンを例に取ると、2006年からの13年間で報告されたのは18例で、平均すると年1.4例。うち重篤例は9例だ。他の薬剤に比べ、大きいものではない」と考察。投与期間や高リスク患者を可能な限り選別し、副作用を未然に防ぐ姿勢が求められると続けた。

 さらに中浜氏は、「抗菌薬の多様性を維持することは、長期的には耐性菌抑制に寄与するものであり、抗菌薬の除外はこの観点からも慎重に検討すべき」と、抗菌薬の不均一化(antibiotic heterogeneity)の重要性を強調。さらに、耐性菌問題が深刻化する一方で新規抗菌薬開発が減衰していることにも触れ、「今ある抗菌薬をいかにうまく使うか、知恵が求められている」と付け加えた。

 最後に、そもそも「病院で」経口第3世代セフェムを採用しないことは、臨床医の判断が尊重されず、処方権侵害の可能性があることを主張。同時に、日経メディカルOnlineの調査でもかぜ患者に対して経口第3世代セフェムが多く投与されていた現状(参考記事:半数超が「今後はかぜへの抗菌薬処方は減らす」)から、「まずはかぜに抗菌薬投与を控える啓発を推進すれば、おのずと経口第3世代セフェムの使用量も減少する」とした上で、「使用量が減少しても、外来治療薬の重要な選択肢の1つとして残すべき」と主張。これらのことから、「経口第3世代セフェムを病院の採用薬からすぐに除外すべき理由が見当たらない」と締めくくった。

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