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2004.03.10

【再掲】【連載:がんの治療成績を読む】 その12 推定喪失患者数(試算2)  もしすべてが優良施設なら年6500人が救命されたはず

 連載「その9」において全国がん(成人病)センター協議会加盟施設における「推定喪失患者数」について考察した。推定喪失患者数とは、治療成績が低い施設で医療を受けたことにより生存できなかった患者の推定数のことである。

 連載「その9」は施設の「群」間の成績格差から推定喪失患者を試算したが、今回は、連載「その10」で見た「個別」施設の成績をベースに推定喪失患者を試算してみよう。

 連載「その9」でも述べたように、施設の間の成績格差については、どの程度が医療技術に起因し、どのくらいが患者背景の違いに由来しているか、現在の情報開示方法では分からない。今後のさらなる分析と開示が待たれるところだ。現状では医療技術の差だけを抽出できないので、連載「その9」で行ったのと同様に、幾つかの想定で「推定喪失患者数」を試算した<>。

シナリオ1】
 各施設の成績を全体の平均生存率と比較。成績格差がすべて医療技術水準に起因していたと仮定。平均成績に達していれば救命できていたはずの人数。

 これは計3570人となる。

シナリオ2】
 各施設の成績を平均の生存率と比較。成績格差の半分が医療技術水準に、残り半分が患者背景に起因していたと仮定。平均成績に達していれば救命できたはずの人数。

 これは計1785人となる。

シナリオ3】
 各施設の成績を最も生存率が高かった施設の成績と比較。成績格差がすべて医療技術水準に起因していたと仮定。最高生存率施設と同じ成績に達していれば救命できていたはずの人数。

 これは計2万1380人となる。

シナリオ4】
 各施設の成績を最も生存率が高かった施設の成績と比較。成績格差の半分が医療技術水準に、残り半分が患者背景に起因していたと仮定。最高生存率施設と同じ成績に達していれば救命できたはずの人数。

 これは計1万690人となる。

 仮にシナリオ2を採用すると、約13万8299人(1992年〜1997年)の治療で1785人(1.3%)の救命の機会を逸していることになる。がんと診断される患者数は年間30数万人で、この集計に入っているのはごく一部に過ぎない。日本全国では、毎年、50万人×1.3%=6500人程度の患者が、施設選択の問題によって救命の機会を逃しているというラフな計算も成り立つ。これは、連載「その9」において同様のシナリオで算出した、施設「群」成績格差からの推定喪失患者数(5000人)の1.3倍に当たる。このことは、「群」単位で見るのでは、成績格差が群内施設の成績のばらつきによって相殺される部分があることを示している。

(埴岡健一、日経メディカル

*随時掲載ですが、当面は毎日掲載する予定です。
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宛先:khanioka@nikkeibp.co.jp

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■ 訂正 ■
 記事中で、がんと診断される患者数は年間30数万人としておりましたが、年間約50万人でした。お詫びして訂正します。