
横浜クリニック院長 精神科医 山田和夫 氏
うつ病患者数の増加が社会的損失となっている。その背景には未曾有の不景気や、うつ病に対する理解のなさなどが指摘される。患者本人が復職したいと思い、医師も復職していいと判断したら、周りはどういう態勢でリワークをサポートしていくべきなのか。前回に続いて、山田和夫氏(東洋英和女学院大学教授、和楽会 横浜クリニック院長)に、リワーク成功のポイントと再発予防についてうかがった。
(聞き手:クロスメディア本部プロデューサー 阪田英也 構成:原田英子)
日経新聞の読み方で分かるうつのレベル
―リワーク(復職)は寛解(治癒)が前提です。寛解しているかどうか、判断の目安はありますか。
山田:例えば、管理職を経験している男性の場合ですが、一番分かりやすいのは、「日経新聞の読み方」です。たいていのサラリーマンは日経新聞を読んでいます。うつ病の一番どん底のときには、その新聞すら読む気がしない。
少し回復してくると、ちょっと手に取るようになる。それから大見出しを見るようになる。さらにスポーツなどの軽い記事を見るようになる。7割がた回復すると、大事なところ、つまり社会人として必要と思われるような記事を読むようになる。でも、最後まではまだ読めない。
新聞を読まない人は、テレビでもいい。朝と夜で体調が違うのが「うつ病」の特徴なので、夜、好きな野球が見られるというのは当てになりません。朝のニュース番組でも、週刊誌でも漫画でもゲームでも、午前中、1時間楽しく見られるかどうか。それで、頭の回転がどの程度になっているかが把握できます。
ある程度日経新聞が読めるようになると、主治医も本人も「復職できるかな」という気にはなってきます。単純作業や簡単な仕事ならできるレベルです。体調でいうと70%が合格ラインで、そこそこ動ける、寝込まずに日常活動ができる。90%でいわゆる寛解。
寛解にもっていければ一番ですが、いま実際にリワークで来ているのは、70~80%くらいの段階の体調で薬を飲みながら、職場復帰までもう一歩というような人たちです。英語とか、パソコンならパワーポイントとか、本人が復職するにあたって役に立つようなものでリハビリ・トレーニングしてもらいます。