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今、医師の育成に何が必要か
21世紀医療フォーラム『医師の育成』研究部会が開催

2009/06/17
21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

 一方、英国の研修制度では、2年間の研修期間中の学習到達度を時系列で評価する。日常診療の中で、与えられた個々の課題をクリアできたかどうかを評価し、評価の積み重ねで研修医の成長の度合いをみるのである。さらに評価するのは指導医だけでなく看護師、技術職、事務職、そして学生も含まれていて、それぞれの立場からの評価を総合判断して研修医の習熟度を判定する仕組みもある。評価項目の中には親しみやすさ、時間を無駄にしないといった項目があり5段階で評価する。

 福島氏によれば、「かつての日本の医学教育にも、日常臨床の中で研修医の診断能力や医療技術の習熟度合いが評価されていた」。システム的に行なわれていたわけではないが、先輩医師や指導医が、折に触れて医学生や研修医の理解度を確かめるような機会が少なからずあったのである。

 しかし、やがて、そうした評価は非客観的であるとされるようになり、日本で、実技を評価しようとすれば、点数で表されない評価など指導医の恣意的判断に過ぎないなどといわれてしまったのは、広く認知された明確な評価基準がないからであろう。これはまた、実技試験(OSCE)が医師国家試験に導入されない大きな理由でもある。

医学生に学ぶ自由はない、あるのは学ぶ義務のみである

 医学教育には莫大な税金が投入されている。2002(平成14)年11月に発表された私立医科大学協会の「医学教育経費の理解のために」によれば、医学生1人につき1年間で1500万円、6年間で9000万円の教育経費がかかるとされる。その教育経費の約半分は国民の税金で賄われ、国公立ではそのほぼ全額が税金である。

 福島氏は、社会的共通資本としての医学教育を考えたとき、医学部の使命は「国民のための医師」を育成することであり、医学生は、社会が医師を必要としている前提のもとで、献体に代表される患者・家族の好意と国の税金が医師養成に使われていることに責任を感じなければならないとした。患者は、「いい医者に育ってほしい」という思いだけで、医学生の前に自分の体を預けるのだから、そのことに対する責任を感じなければならない。すなわち、医学生には「学ぶ自由はなく、学ぶ義務しかない」のである。学ぶことによってしか、医学生はその責任を果たせない。

 最後に同氏は「市民、患者も医師を育てる意識をもつことが大切であり、医学教育という社会共通資本を守るのは国民である」と述べた。

 福島氏の語った医師養成のあり方は「卒前教育は卒後の臨床現場での医師の仕事に影響する」という意味で重要だが、「医学教育は国民がするもの」という森山氏の指摘や「市民、患者が医者をつくるという共通認識をもつべき」という福島氏の言葉は一般の医療消費者にも重く響く。

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