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今、医師の育成に何が必要か
21世紀医療フォーラム『医師の育成』研究部会が開催

2009/06/17
21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

図1 大学付属病院での医療ニーズ

地域医療教育で何を学ぶのか?日本の医療ニーズに応える地域医療教育の在り方とは?

 さて、臨床実習の場としては多くの新しい知識と診療技能が学べる大病院と診療所などでの地域医療の場が考えられる。大学附属病院を学習の場として考えた場合、たとえば慈恵会医科大学を例にとると、初診患者紹介率が50%で平均在院日数は13日である。

 このことが意味するのは、すでに診断された患者が多いことであり、短期集中治療を求めて受診するケースが多いことである。そこで学べるのは急性期疾患の治療であり、慢性疾患の治療を学ぶ機会は少ない。

 仮に1000人の成人がいる地域を想定したとき、1か月間に1回以上疾病・傷害に罹患する人は750人で、医療機関を受診する患者は250人おり、そのうち入院を必要とする患者は9人で大学病院に紹介される患者は1人であるとする研究がある(図1)。最近の研究によれば3〜7人が大学病院を受診するといわれるが、入院にいたるのは0.3人である。臨床実習が大学病院の病棟中心で行なわれていることから考えると医学生が知りえる医療ニーズは1000分の1人程度しかない。

 すなわち、多くの地域住民の医療ニーズに応えられるのは地域中核病院であり、診療所であり、在宅医療(往診医)ということになる。英国では医学部卒業生の半数が総合医(GP)になって病院を紹介するケースとそうでないケースを振り分けているが、その英国では全医学教育カリキュラムの20%を地域での学習にあて、その結果を評価する基準も明確だ。GP養成を大きな目的にしている以上、多くの学習を地域の教育力に求め、地域医療のニーズに応えられる医師を養成しようとするのは当然であろう。

 一方、日本での患者ニーズは目が悪ければ眼科、皮膚に異常が起これば皮膚科というように、地域医療においても専門医であり、病院アクセスのよい日本では英国のような総合医は求められていない。プライマリ・ケアの概念が日本と英国など医療先進諸外国とは違うのである。また、「一次医療ほど難しいものはない」といわれるが、あらゆる患者、病態を想定して診療活動を行う場合の専門性と、専門医の専門性はまったく違う専門性であることを理解した上で、医学教育が行なわれなければ、目的をもって地域医療教育を行うことはできない。

 福島氏は、日本の地域医療教育で医学生が学ぶべきことは、日本の医療環境にふさわしい基本的臨床能力(科目ではない)であるという。ここでいう基本的臨床能力とは、予防医学、健康管理の原則を知り、患者の症状を的確に把握して(医療面接、身体検査技能、臨床検査の選択と結果の解釈)、それを正確にカルテに記載し、根拠に基づいた診療計画を立て、疾患の時間経過を理解した上で、患者の生活スタイル、社会心理的側面を考慮しながら生活指導、支援、保健指導ができる能力である。

 卒前、卒後の臨床教育において、このような基本的臨床能力を養うような教育が必要であるにもかかわらず、日本の初期臨床研修は全身管理を必修にしていない。日本の初期臨床研修は内科6か月、救急3か月、地域医療1か月を必修とし、一般外科(全身管理)が必修化されておらず、「これは他国には見られないユニークな研修制度」と、福島氏は皮肉を込めて言う。

 日本の卒前臨床実習教育、卒後の臨床研修では、何のために実習、研修するのかという明確な目標が なく、「経験目標」のみが重視される。つまり、こういう患者を見た、こういう治療をしているところを見たという経験があればよく、経験をどのように活かしているかについては評価されないのである。

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