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「治療中心の医療」から「トータルヘルスケア」へのパラダイムシフト
21世紀医療フォーラム『21世紀ヘルスケア』研究部会を開催

2009/05/16
21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

伊藤雅治 氏(全国社会保険協会連合会理事長)

「在宅入院制度」という、新たな医療サービス提供体制

 全国社会保険協会連合会理事長の伊藤氏は、「ヘルスケアというが、その中身を十分に吟味することが大切だ」と、まず問題提起。ヘルスケアという言葉は、さまざまな団体が独自に解釈した使われ方をしており、その定義があいまいである。大島氏はこの点に関して、「安易にヘルスケアという言葉を使うことには問題がある」とした上で、「メディカルケアを含めたヘルスケアという意味で『トータルヘルスケア』としてはどうか」と提案した。

 大島氏が言うトータルヘルスケアには、「治療に主体をおいた病院中心モデル」から、「社会生活における疾病管理・健康管理を実現するための医療モデル」構築という意味も含まれている。

 その1つの具体例が在宅入院制度で、伊藤氏は、松田晋哉・産業医科大学公衆衛生学教授の論文「英仏の在宅入院制度と日本への導入可能性」(社会保険旬報2009年3月1日号)を引用して、「自宅を病室と考えて、そこに医療サービスを提供するような医療のあり方もある」と語った。

大島伸一氏(国立長寿医療センター総長)

 松田氏によれば、世界で最初に在宅入院制度を導入したのはフランスで、その後、イギリスでも1970年代から在宅入院制度が開始された。当初イギリスでは、看護ケアやリハビリテーションケアが必要な患者に対するサービスとして導入されたため、病院医療と在宅ケアの中間医療として位置づけられていたが、後にpost-acute医療や在宅化学療法なども行なわれるようになり、現在はそれらも含めて在宅入院と定義されているという。

 イギリスにおける典型的な在宅入院制度は病院が組織し、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなどから構成され、在宅入院はあくまで入院医療の一環であり、支払いも入院医療の枠組みの中で行なわれる。

 このような在宅入院制度は、町、地域を1つの病院として機能させ、医療チームはあたかも病院の廊下を歩いて各病室で治療にあたるように、地域の中で医療を遂行する。

 日本の医療制度下でイギリスのような在宅入院制度が導入可能かどうか。可能だとしても在宅医療の基盤整備とともに、患者、家族を含めた関係者の意識変革が必要だと、松田氏は述べているが、大島氏は、日本においても、医療と介護の地域包括システムを成功させている例として尾道市医師会(片山 壽会長)方式を挙げた。さらに大島氏は、「その他にも医療が医療消費者のニーズに合致して、うまく機能している地域は存在するが、点として存在する優れた地域医療サービス提供態勢を構築している地域を点から線そして面へと全面展開していくために知恵を絞らなければならない」と、今後の課題を指摘した。

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