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「がん検診」衰退に歯止めを。日本には、早期に「予防医療」を確立することが必要

2010/06/25
医療法人社団同友会理事長 高谷典秀 氏

「特定健診・特定保健指導」には、財源の担保が不可欠


――経済状況が悪化した結果、保険者の財政も苦しくなって、「がん検診」の受診率も下がってきた。そういう負の連鎖が起きているのでしょうか。また、特定健診・保健指導との関係はどうでしょうか。

高谷 国民生活基礎調査は3年に1回ですし、最近の財政状況悪化などによる影響の評価は平成22年度の結果を待つ必要があります。「特定保健指導」はすごくいいアイディアで、すばらしい事業だと思っています。ただ、財源の問題があって、なかなか進んでいません。

保健指導で生活習慣を改善できれば、“薬を飲まずに済む”ので、“自然でいい”と思いますが、実際には大勢の人にアプローチすることになると、かなりのマンパワーが必要になります。具体的には、まず人件費が発生します。その場合、「費用対効果はどうなのか」、「もし病気が減ったとしても、それが回収されるには、相当長い年月がかかる」ということが問題となります。現在、実施主体となっている保険者が、「このような財政基盤でやれ」といわれても、大規模に実施することは難しい状況と言わざるを得ません。

いまは、実施目標として「ペナルティ」が課せられているので、相対的に他の健保よりも頑張ろうとして、ある程度予算をつけることもあるでしょう。そうすると保険者の義務になっているのは、「特定健診・保健指導」ですから、優先順位としてはそちらに財源を入れます。がん検診や人間ドック事業については、場合によっては、非常に後退してしまうのではないかという恐れがあります。こういった現実を踏まえて、しっかりと財源をつけるということが大切だと思います。

――健康保険組合収支状況の推移で、この2~3年非常に収支が悪化したのは、後期高齢者医療制度が直接の原因。ということは、後期高齢者負担金がなくなれば、健保財政は元に戻るのですか?

高谷 そうです。高齢者医療制度による納付金の割合が、半分ですからね。経済状況も悪化して、給料が下がったり、組合員が減ったりしていることも、拍車をかけていますが、間違いなくこの負担金が大きい。現役世代が加入する医療保険は、相対的に若い年代を担当しているので、医療費も少なくて済みます。この人たちが、やがて高齢者医療制度に入るわけですから、ある程度の負担をしてあげるのは当然だと思います。ただ、やはり全体としては足りないわけで、その少ないパイを奪い取ろうとしているわけです。

また、「どの程度負担するか」という問題もあります。中小企業の人たちが加入している協会けんぽ救済のために、組合健保と共済健保が「2400億円肩代わり」させられるという厚労省案が出されましたが、反発は必至です。

医療費の総額を増やそうという話の中で、よく「消費税を上げ、その分を医療費に回せ」といわれますが、実際は財務省が担当して入れる国費が4分の1。残りは保険料ですから、この保険料の負担が非常に大きい。日本は諸外国に比べて、保険料の料率が低いわけですから、やはり、「高齢者医療などの医療費を支えるために、相応の負担をしなければならない」ということを考え、財源をしっかり手当てしていけば、少ないパイの奪い合いによる弊害はなくなると思います。

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