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国民皆保険堅持のために、必要な「負担」の議論。「総合医(家庭医)」が初診を担当する診療システム確立を

2010/04/23
医療経済研究・社会保険福祉協会理事長 幸田正孝氏

――幸田さんは、「高齢者医療」関わる新たな労働力として外国人の採用があっていいとお考えですね。

幸田 やはり、身の回りの世話、3度の食事をどうするかという、介護の人手の問題が大きい。誰が“介護の担い手”となるかという問題を真剣に討議し、外国人労働者にその仕事を任せるというジャッジをしないと、介護に必要な労働力を確保するという問題は行き詰まってしまいます。また、外国人の日本語習得レベルにも幅をもたせ、「医療用語を完璧に覚えなくては採用しない」というようなことではなく、OJTなど実際の介護をしながら、教育も併行するなどの配慮が求められます。

ところが、自民党政権でも民主党政権でも、国策として外国人労働者は入れないということがあります。それを取り払うためには、介護のモデル地区をつくり、ベトナム人やフィリピン人の介護福祉士を入れて、“こんなにうまくいっている”という例を何箇所かでやってみせることです。

また介護福祉士の資格も、リーダー格の1級介護福祉士と、そのリーダーの下で働く2級介護福祉士の2つに分けて、外国人も勉強すれば1級に上がれるようにしたらいい。国の制度的な支援を受けつつ、外国人労働者を訓練して、介護現場に派遣する。そういうルートを開いて、受け入れ体制を整えることが必要です。


テーラーメイド医療時代の
メディカルクラスター構想


――産官学の有識者の方々に日経がメディアサポートする形で、「21世紀医療フォーラム~良い医者、良い医療を創るプロジェクト」がスタートし、活動2年目に入りました。2010年のフォーラムの課題、幸田さんが期待されること、そして、提言実現に向けた道筋についてのアドバイスをお願いします。

幸田 先ほどから申し上げている「医療のシステム化」や「患者の流れをコントロールすること」が最優先課題です。また、最先端医療をどのように取り入れていくかも課題の1つです。医療、医学は日進月歩で、特にがんについては、「遺伝子治療」「分子標的薬」など最先端治療が出てきています。そのとき国民皆保険では、どうしても“標準的医療”を採用することになりますが、それよりもっと高次な医療、つまり進歩した医学や医療が患者に与えることのできる最先端治療をどのように適用していくかということを考えなければいけない時代にきています。

20世紀は、医学、医療は進歩したけれども、さほど“幾何級数的な進歩”ではありませんでした。しかし、21世紀の医療、医薬、医薬品は、「分子標的薬」のような、その人の個性に合った、あるいは遺伝子に合った薬を使うようになります。

――テーラーメイド医療ですね。

幸田 そうなると、医療費はものすごく高額化します。従ってそのような高次医療を、全ての人が享受できることは難しい。しかし、その解決法としては2つあります。1つは、ドイツのように高額所得者は外して、自由診療でやってもらって民間保険でカバーする。つまり、あるレベルの年収で国民皆保険の枠から外れてもらう層を規定するというやり方です。

もう1つは、保険診療と自由診療がお互いに混在する、基礎的な部分は保険で診るけれども、非常に高度な問題は自由診療でやるという「混合診療」の実現です。混合診療問題は、10年20年前に比べるとずいぶん進展してきました。日本医師会は反対ですが、これはある程度ルールができていて、もう一歩でも二歩でも早く進めていくことが必要なのではないかと思います。

そのためにもやはり、そういうものを集積できるメディカルクラスターを何箇所かつくって、そこで先端的な医療をやること。それと同時に、グローバル化した時代の医療というものを、日本でも考えないといけないのではないでしょうか。昔は、インドネシア大統領の関係者などが、良い医者を紹介してくれと言って来たものですが、今は逆に、日本からシンガポールやバンコク、韓国に、メディカルツアーで出かける人が多い。

やはり、各国から患者を受け入れるようなことを積極的に検討すべきです。そのためには、最先端医療をやるところがなければいけない。大阪や東京では、メディカルクラスター構想はいろいろあります。大阪では中津の大阪駅操車場跡地を再開発して医療特区をつくりたいとか、東京は、まだ定かではありませんが、築地市場が移転したら、その跡地をメディカルクラスターにしたいという話は出ています。

保険の適用外、あるいは今は特区でしかできないけれども、外国人医師でも一定の免許があれば日本で診療ができるということも検討すべきでしょう。その契機ともなる動きを21世紀医療フォーラムにおいて始動していただければと考えています。

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