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国民皆保険堅持のために、必要な「負担」の議論。「総合医(家庭医)」が初診を担当する診療システム確立を

2010/04/23
医療経済研究・社会保険福祉協会理事長 幸田正孝氏

「総合医(家庭医)」を診療の入り口とする「診療システム」。
患者側のフリーアクセスの問題


――次にドイツの医療体制についてお伺いします。日本でいう「かかりつけ医」的な制度はあるのでしょうか。


幸田 ドイツは、保険医になるのに定員制があることが特長です。医師の側に流入制限があって、例えばある地域で開業したいと思っても、もうすでに満杯だとウエイティングリストに登録され、その地域の開業医がリタイアしたり、なにかしらの都合で引っ越したり、空きができない限りそこでの開業はできない。そういう仕組みになっています。既得権というと表現がきつくなりますが、「かかりつけ医」「開業医」の場合は、地域ごとに1人ずつ保険医を指定していきます。勤務医の場合は別で、日本とほぼ同じです。

――日本では、さまざまな医療問題に対処するため、場当たり的に「パッチワーク」のような医療政策が打ち出されています。この中で、幸田さんが喫緊の医療政策、医療改革は何だとお考えでしょうか。

幸田 2つあると思います。1つはシステム化、もう1つは、「高齢者医療」や「看取りを含めた高齢者ケア」をどうするかということです。まず、システム化は、国民サイドと医療サイドと両方ありますが、医療サイドについて言えば、日本では、「総合医(家庭医)」があって、「専門医」につながるという“システム化”ができていない。患者サイドにもそういう意識はなく、みんな総合病院、大病院の外来に押し寄せる。その結果、開業医、地域中核病院、高度医療を手がける専門病院、そして大学病院の機能分化が全く出来ない状況を現出しています。

――地域で、診療所や病院ごとの役割分担、機能を明確化する必要があるということですね。

幸田 その前段階として必要なのが、患者がまず「総合医(家庭医)」で診療を受け、そこで篩い分けをしてもらい、高次医療を役割とする専門医や大学病院などへ紹介・移送されるという「診療システム」です。これが日本はない。しかしこのシステムは、今日言って明日生まれるものではなく、総合医、家庭医を診療の入り口とする「診療システム」を設計しても、実際に機能するまでには、最低でも10年くらいはかかります。その間の経過期間をどうするか。現在の開業医をどのような扱いにするか。いろいろな問題はありますが、とにかく1日も早く、こうした「診療システム」を発足させる必要があります。

―― 一方、医師の側でも「総合医(家庭医)」の育成については問題がありますね。

幸田 現在の新臨床研修制度で問題となっていることの1つに、初期研修2年を終えた後に、後期研修から先の道が見えないというキャリアパスがあります。これについて私は、他の専門科は別として、後期研修で「内科コース」と「外科コース」をつくり、それを2年くらいやって、内科の登録医、外科の登録医をまず育成する。その上に、必要とあれば、外科については臓器別に、内科については血液内科などと細分化して、さらに詳しく、また2~3年やるとういう方式を考えています。この「内科コース」「外科コース」で、「総合医(家庭医)」が養成できると思います。

医学部6年を卒業して、初期研修後、内科に行くのか、外科に行くのか、あるいは特別な専門科へ行く人もいると思いますが、それから先、せめて7~10年、30代半ばまでは、こういうコース、すなわち「総合医(家庭医)」育成コースがあるということが見えるかたちで早く示してやらないといけないと思います。

――大阪大学副学長の門田守人氏は、専門医認定制度に関連して、あまりに細分化した学会の改革の旗印として、「ざっくり内科」「ざっくり外科」という区分を提唱しています。

幸田 医学界の体制も、門田氏が提唱される「一般外科」「一般内科」、そしてその上に臓器別の専門医をつくるということで、大方の意見はまとまりつつあります。また、「総合医(家庭医)」に関連する学会も、プライマリーケア学会など3学会が1つにまとまる方向で協議を続けており、学会の重鎮やリーダーの意向が収斂しつつあるような感じを私は抱いています。

高齢者医療のグランドデザイン。
外国人介護労働力を入れたモデルづくり


――幸田さんは、21世紀医療フォーラムの中で、「21世紀ヘルスケア」研究部会の主要なメンバーであり、医療を「予防」「治療」「高齢者ケア」という3つの観点から、ヘルスケアという大きな括りで考えるべきと主張されています。この中で特に日本の「高齢者ケア」で欠けている点について、お考えをお話しください。

幸田 これまでの「急性期医療」とは別に、高齢者が年とともに身体機能が衰えていくことを前提とした「高齢者医療」の概念、そのケアということを考えていかねばなりません。地方では、地域社会がある程度残っていることで、その地域の高齢化率が3割~4割になっても、老人同志が助け合い、何とかやっています。しかし大都会の老人は、そのほとんどが孤立しているので、非常に難しい。

人間誰しも、“できるだけ健康で長生きをして、死ぬときは自宅で死にたい”というのが願いです。しかし現代日本では、高齢者ケアをどのようにやっていくかという施策がいま1つはっきりしない。そこをどうするかということだと思います。体が自然に弱ってきて、身体機能が衰え、言語能力、咀嚼能力が衰えてくる。そういう自然の姿を自然のままに見つめていく「介護」や「リハビリ」を、高齢者ケアとしてデザインし、制度化していく必要があるのではないでしょうか。

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