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国民皆保険堅持のために、必要な「負担」の議論。「総合医(家庭医)」が初診を担当する診療システム確立を

2010/04/23
医療経済研究・社会保険福祉協会理事長 幸田正孝氏

医療経済研究・社会保険福祉協会理事長 幸田正孝氏

昨年11月、日独社会保障体制の回顧と展望をテーマに、ドイツから日本の厚生労働省にあたる行政経験者を招いて、国際シンポジウムが開催された。(Good Doctor NETで既報)。シンポジウムを主催した医療経済研究・社会保険福祉協会の理事長である幸田正孝氏に、厚生省事務次官として日本の社会保障体制を築いてこられた立場から、現状の医療問題、医療政策のあり方について意見を伺った。
また、医療改革の解決型提言組織として、スタートして1年が経過した21世紀医療フォーラム。その代表世話人の一人としても活躍されている幸田氏に、2010年のフォーラムの課題、提言などのアクションの達成への道筋についても、ご教示いただいた。

社会保障制度の根幹を揺るがす
日独共通の問題点


――シンポジウム「日独社会保障政策の回顧と展望」を通じて、日独など先進国に共通する社会保障の問題、また、日本だけに存在する問題点が指摘されたと思いますが、その内容についてお教えいただけますか。

幸田 日本の社会保障の中では、健康保険制度が一番早く、1922年に制定されました。つまり、日本の健康保険制度は90年、範を取ったドイツの健康保険制度は、120年を超える歴史があります。両国ともそれぞれの文化や社会、そして自国の経済に応じて発展をしてきました。そこで今、両国に共通する一番の問題は、言うまでもなく「少子高齢化」「経済の低成長~マイナス成長」が挙げられます。

他の欧米諸国を見ると、最近フランスでは、国の施策が功を奏し、出生率が上向いてきています。また、アメリカは、南米やアジアからの移民の流入がありますが、全体的に「少子高齢化」が大きな問題となっています。

これまでの健康保険制度は、どの国でも、“人口は増加する”“経済は成長する”ことを暗黙の了解、すなわち制度設計の前提として、その運営もなされてきました。しかしご承知のように、「少子化」「低成長」という現実がこの前提を覆しています。

日独シンポでは、「これからも健康保険、年金は、社会保険方式で行くべきである」という点で意見の一致をみました。しかしその場合、誰がどのように財源を賄うのかという「負担の問題」を避けて通ることはできません。この「負担の問題」の議論が深まらないことには、いくら意見の一致をみても具体的な方法は見えてきません。

日本では“国民皆保険を堅持していくこと”が国民の総意と言えると思いますが、具体的にどうやっていくのかという道筋が見えない。それが、日本の健康保険の一番大きな問題だと思います。

――現在は、被保険者3割負担ですが、負担率も上げるべきだとお考えでしょうか。

幸田 3割負担が、私は限度だと思います。これ以上、上げるわけにはいきません。今でも、窓口患者負担は、先進国の中でも重いほうです。4割、5割ということは将来ともに考えられません。国によって、例えば、薬をもらうときに薬剤1剤につき幾らとか、いろいろなやり方があるので一概には言えませんが、定率の負担で3割は限度でしょう。

問題は保険料の負担です。経済が停滞していて給料が伸びない、しかし医学医術の進歩で医療費は増えている、高齢化により、ますます医療費はかかるということで、これまでは協会けんぽで、給料の8.2%に当たる額を労使で折半していたわけですが、2010年からは、地方自治体によって違いますが、9%強まで引き上げることになった。それでも日本の負担は、それほど高い方ではありません。ドイツでは健康保険料は10%を超えます。

――保険料に関しては、日本のほうが低負担なのですね。

幸田 日本では、労使、医療関係者も含め、平均で負担をするという話になると意見が一致します。健康保険について、これほど税金で負担をしている国というのも珍しい。大部分は国の税金ですが、一部地方の税金が入って、22~23%。例えば医療費が100万円かかったとすると、22~23万円は税金で払っていることになります。

ドイツは、東西ドイツの統一や、移民の問題など、いろいろな変遷があり、最近、ようやく国の税金、州の税金を入れるようになってきましたが、基本的には国庫補助がなかった。もともとドイツの社会保険は、「連帯」つまり、お互いに支えあうという発想で始まっていますが、最近では「連帯」という考え方が、必ずしも国全体として受け入れられなくなってきているという状況があります。

日本の場合は、むしろ国庫負担を減らそうという考え方が強いのですが、ドイツの場合は国庫補助を入れようという考え方が出てきました。それだけ健康保険の財政が悪いのだろうと思います。

日本が模範にしたドイツの健康保険の保険者は、『疾病金庫』といって、それを日本流に翻訳したのが「健康保険組合」です。政管健保に相当する『地区疾病金庫』、健康保険組合に相当する『企業疾病金庫』、国民健康保険組合に相当する『同業者疾病金庫』など、全て組合主義で、日本のような政府管掌健保、協会けんぽのような自治体直営のものはないわけです。

日本の場合、大企業は健康保険組合、残りの中小企業などは、協会けんぽが一本にまとめてやっていますが、ドイツの場合はそれぞれが連帯をするというので、企業は企業、地域は地域で「疾病金庫」をつくってやっている。そこは全然違います。

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