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製薬企業のあるべき姿と医療分野の成長戦略

2010/02/22
バイエル薬品会長 栄木憲和氏

バイエル薬品会長 栄木憲和氏

2011年に日本法人設立100周年を迎える大手総合化学メーカー「バイエル」の一員で、外資系製薬企業としては先駆けとして知られる「バイエル薬品」。“アスピリン”を解熱鎮痛薬の代名詞にまで普及させた製薬企業としての誇りは、社員の胸に輝くバイエルクロスに象徴される。数々の時代の波を乗り越えてきた根底には、人の心を掌握する徹底的な話し合い、愚直ともいえるコミュニケーション術があった。
2010年から、医療問題への解決型提言を目指す「21世紀医療フォーラム」の代表世話人として新たに参画された同社会長の栄木憲和氏に、バイエル薬品における人心掌握術、生き残り戦略、医薬品業界における問題解決のための方策などをうかがった。(聞き手:日経BPnet編集 プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班 原田英子)

離職率の低さが物語る“人と人とのつながり”


――まず、バイエル薬品とはどのような企業か、また、その中での栄木さんの役割を教えてください。

栄木 バイエル薬品は、何より、人を大切にする企業だと思います。顧客、特に医薬品卸との関係は非常に良好です。売上は、日本で16~17位ですが、医薬品卸の間で毎年実施されるアンケートでは、信頼できる企業として、いつも5番以内の評価をいただいています。また、社員の離職率は非常に低く、管理職の離職率も0.2%。流動性が高いことで知られるMRの定着率の高さも誇れるデータがあります。

この背景には、おそらく、各地域の文化など伝統的なことを尊重し、人と人との繋がりを大切にする社風があるためと思われます。例えば、バイエル本社があるドイツのレバクーゼン市では、毎年クリスマス時期になると、退職した社員を招いてのパーティーが連日繰り広げられ、社長が感謝の辞を述べるのが恒例行事です。

日本のバイエル薬品でも本社に倣って、毎秋「悠友会」という退職者のパーティーを開催しています。薬剤師の方が多いので、退職後もネットワークがあることで、我々にとっても非常にいい市場の情報を得られますし、新薬が出れば新薬を使ってもらえるカスタマーにもなってくれます。

もう1つは、創業以来、社名変更もなく、社章のバイエルクロスを胸に付けているという誇りがあるように思います。1897年に、世界で初めて低分子医薬品を合成し、それを1899年に“アスピリン”として売り出したという歴史の上に生きている、そこにアイデンティティがあるのではないでしょうか。

このような企業風土を維持するために、私自身が続けている工夫としては、「話そう会」の継続があります。前々任者で、今、本社のボード4人のうちの1人になっているヴォルフガング・プリシュケが始めたものですが、全国82営業所を順繰りに回って、MR(メディカル・リプレゼンタティブ:医薬品情報担当者)から問題点を挙げてもらったり、大学病院の廊下に、私も一緒に“立ちんぼ”して、教授との出会いを持っている中で、現場の情報収集をしたり、その問題解決に当たっています。

ちなみに、このMRの前身であるプロパー制で、製薬企業の担当者が医療機関を訪問し、医師への医薬品情報提供活動を日本で初めて行ったのは、バイエル薬品なんです。

――全国津々浦々、どのくらいのペースで回られるのですか。

栄木 最低でも月に1回は、どこかへ行きます。北海道と沖縄には毎年行きますが、あえて、冬は寒い北海道、東北、夏は暑い沖縄、九州へ行くことで、MRの苦労の片鱗を味わうようにしています。各営業所とも合計で2~3回は行きましたので、約1500人いるMRのほぼ全員の顔と名前が一致します。

抜き打ちで行くこともありますが、必ずやることは、MRの車のチェックです。ボンネットを開けさせて、古いパンフレットをたくさん積んでいないか、キズはどこに何箇所あるかなどを見ます。きれいにしているかどうかが気になりますから。それが浸透してしまったので、みんないつ行ってもきれいにするようになりました。

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