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国民皆保険を維持し、医療コストの行き過ぎを防ぐことが日本の課題。病院は、「経営のプロ」を積極的に活用すべき

2009/10/19
野村ホールディングス 執行役副社長 兼 COO 柴田拓美 氏

持続し進化する自らのイメージを強く、深く描く


――柴田さんは留学、駐在等で海外経験が非常に豊富です。欧米の医療体制、医療と行政の関係、病院経営などの面で、日本がお手本とするべき事例はありますか。

柴田 お手本になるかどうかはわかりませんが、私が体験して非常に面白かったのは、英国のジェネラル・フィジシャン(GP)とスペシャリスト(専門医)との関係ですね。だいたい呼び方からして違う。GPはドクターを自称していますが、スペシャリストはミスターと呼ばれるのを好みます。

例えば、典型的なスペシャリストは、ロンドンの名医街と呼ばれるハーレー・ストリートに、立派なオフィスを構えています。ミスター誰それのクリニックという名が付いていますが、行ってみると、医療設備のたぐいは何もない。まさにオフィスです。ゆったりした応接間のような部屋に通されて、ミスターと呼ばれるスペシャリストと、じっくり話をします。スペシャリストがする第一の仕事は、患者が自分のクリニックに来たことが正しいかどうかを、チェックすることです。

スペシャリストのクリニックに行く場合、多くの人はGPの紹介状を持って行きますが、その紹介状は簡単なものですし、スペシャリストにはさほど重視されません。GPによって能力が違いますから、紹介状の記述を鵜呑みにはできないのです。あくまでスペシャリスト自身が、丁寧に問診するんですね。英語力が必要なので、外国人の患者、つまり私自身にとってには辛かったですが。

――問診の結果、検査や手術が必要になった時にはどうするのですか。

柴田 スペシャリストは、設備の良いプライベート・ホスピタルと契約していますから、そのホスピタルに予約を取って、検査や手術を行います。手術の場合は、ホスピタルにいるアシスタント医師やコメディカルなどのスタッフを自由自在に使います。従って、プライベート・ホスピタルの経営にとって非常に重要なのは、いかに良いスペシャリストを、お客として確保するかです。

良いスペシャリストと数多く契約し、プライベート・ホスピタルの経営がうまくいくと、高度な医療機器を使う時間がそれだけ長くなり、効率がよくなります。医療機器のキャパシティが100だとすると、院内のスタッフ医師だけで使っていると、稼働率は20程度だったりする。それを院外のスペシャリストとシェアすることで、稼働率は90近くまで上がっていく。それだけ医療コストも削減でき、経営が上向いていくわけですね。

――英国では、地域ごとにGPが割り当てられていて、その当たりはずれが大きいとも聞いていますが。

柴田 GPはかなり自動的に、決められてしまうようですね。面白いのは、よいGPほど、よいスペシャリストをよく知っていること。ですから、よいスペシャリストを知っているGPをさがしあてるのが、一番難しいなんて話もありました。

実際、素人みたいなGPに当たってしまい、診断に時間がかかっているうちに、命が危なかったという人までいるのです。だからといって、プライベート・ホスピタルに行けばいいかというと、そちらも医師とのアポイントに時間がかかったりするから、緊急の医療には向かない。そのため緊急医療のための専門病院というのもあります。

ロンドンにはセント・メリーズという大きな病院があって、そこは緊急の場合、GPを介さずに診療を受けることができます。最初にロンドンに駐在した時、このセント・メリーズだけは覚えておいたほうがいいと、英国人のビジネスマンに言われて、驚いた覚えがありますね。

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