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国民皆保険を維持し、医療コストの行き過ぎを防ぐことが日本の課題。病院は、「経営のプロ」を積極的に活用すべき

2009/10/19
野村ホールディングス 執行役副社長 兼 COO 柴田拓美 氏

――病院の資金調達と運営に関しては、英国発のPFI(Private Finance Initiative=民間の資金やノウハウを使って公共施設を整備、運営する手法)も注目されていますね。

柴田 PFIは、1999年にPFI推進法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行されて以来、日本でも法整備が進んでいます。もともとは英国でも、道路を造る、飛行場を造るといったさまざまなニーズがあったのですが、実際には、学校や病院の建物を造るのに利用されるケースが多くなっています。

PFIは野村でも手がけていますし、いま財政難に悩む地方の公共団体では、もっと活用されてよい手法です。ただ問題なのは、PFIがあたかも“打出の小槌”のように使われてしまうことです。あくまでも将来の何らかの収入を担保にして、公共施設を造るわけですから、将来の収入や運営コストに対する見通しが甘いとたいへんなことになる。

にも関わらず、将来への見通しとか運営に関しては、われわれのような金融機関、アドバイザーは関与できないことが多かった。資金調達、不動産調達の部分だけを任されて、経営、運営の部分には、これまではあまり関われなかったのです。そこが従来型のPFIへの反省点です。その意味でも、コンサルティング業務に注力する「野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー」の意義は大きいと思っています。

――「経営と診療の分離」といっても、いまは経営そのものが存在しないような状態なので、「分離」のとば口を開くこともできない。そこで、いま経営を主導している医師に、病院経営についてある程度は学んでもらう。その上で、「経営と診療の分離」への道筋、工程表を作っていくという作業が必要ではないでしょうか。

柴田 確かに、そういう地道な作業が大事かも知れませんね。将来の経済合理性を担保することに関しては、少し面白い話があります。先日、米国の大きなプライベート・エクイティ・ファンド(Private Equity Fund=未上場の企業の株式に投資し、その企業の成長や再生を支援することによって企業価値を高め、その後の新規上場や他社への売却を通じて利益を得るファンド)のナンバー2に会って話をしたのですが、いまや彼らでさえ、金融テクノロジーによる付加価値は、計算に入れないそうです。ファイナンスの仕方そのものは、コストを多少、下げるだけに過ぎない。やはり重要なのは、現場の経営改善だというのです。

例えば凄腕の、現役バリバリの経営者をアドバイザーに迎えるとか、実際に現場に入り込んで、手を汚して、実践的な改善努力をする人材を数多く確保することなどが、企業価値の向上につながる要素として評価される。そうした非常に泥臭い、現場的な改善こそが価値の源泉になるのです。まったくの原点回帰なのですね。

例えば、彼らが新しい会社を買った場合、最初の100日間で何をするのか、地に足の着いた形で計画するのが第一だそうです。それが終わると、さらに次の100日の行動計画に移る。少し前まで、金融テクノロジーの権化のように言われていたプラベート・エクイティ・ファンドでさえも、そんな考え方に変わってきているのです。いま経営危機だと言われている多くの公的な病院についても、効率的な経済主体としての機能をどう回復、改善していくかについて、泥臭く、現場に即して、ねばり強く考えて行くべきでしょう。非常に重い課題ですね。

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