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国民皆保険を維持し、医療コストの行き過ぎを防ぐことが日本の課題。病院は、「経営のプロ」を積極的に活用すべき

2009/10/19
野村ホールディングス 執行役副社長 兼 COO 柴田拓美 氏

野村ホールディングス 執行役副社長 兼 COO 柴田拓美 氏

21世紀医療フォーラムの代表世話人である野村ホールディングス執行役副社長の柴田拓美氏は、米国留学、英国勤務など豊富な海外経験を持つ。近年は、病院の資金調達、経営などをサポートする「野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー」の事業に注力するなど、医療への関心も深い。その柴田氏に、グローバルな視野からの日本の医療問題の分析、病院における「経営と診療の分離」の可能性などについてうかがった。

(聞き手:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班 桶谷仁志)

予約制とトリアージを組み合わせて、待ち時間を減らす


――医師不足や病院の経営悪化など、現在の日本の医療問題は絡み合った糸のように、解決が難しいと言われています。柴田さんが財界人としての立場から、さらに一般人・患者(医療消費者)の立場から、いま一番危惧されている問題は何でしょうか。

柴田 医療に関する日常的な、具体的な体験からして、私は危機感というものをあまり強くは感じていません。ですから、報道機関による医療危機の報道というのは、少し煽りすぎというのか、脅かしすぎではないかと第一に感じますね。そういう前提の上で、一般人の立場からの、たいへん素朴な感想から始めましょう。私が日頃から体験的に感じているのは、病院に行って診療を受ける際の時間のプロダクティビティ(生産性)が非常に低いということです。この点で、病院の仕組みそのものを、改善する余地があるはずだと思います。

――いわゆる「2時間待ちの5分診療」という問題ですね。

柴田 プロダクティビティという言い方は、プロダクション&オペレーションマネジメントというビジネスの枠組みに基づいたものです。病院を、あたかも生産現場であるがごとく考えて、その運営プロセスを合理的なものにする余地はあると思いますし、その際に役立つのがプロダクティビティ(生産性)という考え方です。さらに、病院による顧客サービスという考え方も重要ですね。例えば、お見舞い客へのサービスです。私の年齢になると、近親で入院する人が多くなる。その際、お見舞いに行っていつも感じるのは、病室の造り方自体が、お見舞い客が来ることを前提にしていないことです。おかげで、親しい人のお見舞いに行ったのにも関わらず、非常に疲れてしまう。病棟のデザインを、患者の居住性や見舞客の快適性を考慮したものにするだけで、病院のイメージは、ずいぶん変わるのではないでしょうか。

――その点は、英国や米国の病院と比較していかがでしょう。

柴田 英国、米国でも、一般的な病室の造りや病院運営の効率はあまりよくないようですね。贅沢な造りの病院もありますが、その場合は、あまりにも贅沢過ぎて、効率そのものはよくないのではと思うことが多かった。ただ日本の場合でも、新しい病院の中には、よく考えられた造りのものがありますね。この間、義理の母親が手術をするというので、神戸の公立病院に行きましたが、そこはたいへんよい造りになっていると思いました。

ナース・ステーションが病院の中央にあって、そこから放射状に、病棟、診療棟などの建物が配置されていました。こうした構造だと、病室で何か事故があった場合でも、最短の時間でサポートができますね。病室も、お見舞い客が過ごしやすい構造になっていましたし、病院による顧客サービスとは何かが、よく考えられていると感じました。

病院がサービスすべき顧客とは何かと考えると、まず患者、さらに見舞客がいます。サービスする側と考えられる医師や看護師などのコメディカル・スタッフも、実は病院にとっては、大事なサービスの対象です。こうした顧客や従事者それぞれに対するサービスのバランスをよく考えて、病院のデザインや運営体制を作っていくべきだと思います。

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