日経メディカルのロゴ画像

超高齢社会の医療とシステム(2)
フィールドでの実証研究を通して、超高齢社会のあるべき姿を追及

2009/08/24
東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫氏

─高齢者の生活を支える医療ですね。

辻:若いときは急性疾患は病院で治療し、治癒すれば家庭に戻って以前の生活に戻ります。

 しかし、体力のない高齢者が入院すると、臓器の治療には成功しても場合によっては介護の必要な状況になってしまうことがあります。残された生活能力を最大限回復させて地域に戻す医療、すなわち、急性期だけでなく回復期のリハビリを行い、できる限り本人の生活力を回復させるための医療が必要です。そして、在宅で高齢者の生活を総合的に診て、必要な場合には専門医に紹介する。病気になり、入院治療が必要なときにはしかるべき病院を紹介し、退院したら再びコミュニティで生活でき、そこでは、入院治療の必要がない限りは在宅ケアシステムと連携して在宅医療を行うような在宅医療福祉のシステムが必要です。そして、たとえ虚弱になっても在宅で自分らしい生活を送り、自分らしく老い、生をまっとうして死んでいく。このように、たとえ弱ってもその人らしい生活を通して喜びを持てる社会を目指すことが大切です。

─豊四季台団地での実証研究はどこまで進んでいますか。

辻:豊四季台団地は、老朽化した建物の建て替えが進んでいます。お年寄りには使いにくかった建物にエレベータを設置するなど、完成すれば、高齢者の身体機能に配慮した団地に変わるはずです。私たちは7月20日に地域関係者を招いた講演会を行い、そこで持続可能な超高齢社会のイメージあるいはAging in Placeの考え方を説明し、具体的な取組みにかかります。

 緒についたばかりですが、他の都市型高齢地域のよいモデルケースを目指します。また、例えうまくいかないところがあるとしても、そこから何かが学べるはずで、その経験を次のステップに生かせます。失敗を恐れずに高齢者が幸せだと感じられる社会、持続可能な社会をつくるためにチャレンジしていきたいですね。

夢に向かう人間と、夢を持たない人間の出口は違う

─豊四季台地域の試みは、住宅政策、医療政策だけでなくさまざまな領域の研究や産業を活性化させることができるでしょうか。

辻:この試みを通じて福祉機器の開発にも取り組みたいと考えています。あるいは高齢者が地域の中で役割を持ち、地域における人と人とのつながりを深めるシステムづくりにも取り組みたいと考えていますが、夫婦関係、親子関係、友人関係など人間関係の研究分野で新しい知見が得られることも期待できます。さらに若者の高齢者観、高齢者の高齢者観、メディアの高齢者観など社会・文化的な側面で価値観の変容がみられる可能性もあります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップページトップインタビュー > トップインタビュー 新着一覧

トップインタビュー 新着一覧

この記事を読んでいる人におすすめ