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超高齢社会の医療とシステム(2)
フィールドでの実証研究を通して、超高齢社会のあるべき姿を追及

2009/08/24
東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫氏

図2 Aging in Placeの考え方(東京大学高齢者総合研究機構設立構想より)

─Aging in Placeという言葉がありましたが、具体的なモデル地域を想定しているのですか。

辻:1つは千葉県柏市の豊四季台地域です。ここには昭和40年代に建設された約5000世帯の団地があり、場所によっては高齢化率が35%を超えているので、都市型高齢社会の在り方を研究するフィールドとしては最適の地域と考えています。もう1つは福井県を考えており、県との協議もまとまり現在候補地を選定しています。

─2つの地域を選んだ理由は。

辻:都市部と地方では高齢社会の在り方が異なるというのが大きな理由です。地方都市は、介護施設もそれなりに充実しています。従って多くのお年寄りは、最後は特別擁護老人ホームなどの介護施設で過ごしますが、果たして、それで十分といえるでしょうか。おそらく、高齢者は家族に迷惑をかけたくないという思いから施設に入所している方が多いのではないでしょうか。

 私たちは福井県で、高齢者の就労や生きがいづくりに取り組むほか、地方圏においても最後まで住み慣れた所で自分らしく生きられるシステムとはどういう形のものなのかということも研究していきたいと考えています。

 一方、都市圏は昭和30年代から40年代に建設された団地を中心に急速に高齢化が進んでいますが、そこでは高齢者の孤立が大きな問題になっています。当時、日本はサラリーマン社会に突入し、ダイニングルームがあり、システムキッチンがある団地は憧れの的でした。サラリーマンは、そこから出社し、子育てをしてきました。そして彼らが高齢者になった時、子どもたちは独立し団地を離れ、高齢者だけの世帯が増えたのです。

 住み慣れた地域で自分らしく生きるためには、そうした地域への様々な取組みが不可欠です。例え高齢になって1人暮らしを余儀なくされても、生き甲斐を見出せるコミュニティであるためには、高齢者の身体機能を考慮した多様な住居や移動手段、元気な高齢者が地域の何らかの支え手になり、それによって高齢者自身も喜びを見出せるようなシステム、あるいは健康管理や在宅医療ケアシステムなどが必要です。

持続可能な社会のための医療システム

─高齢者が、住み慣れた地域に住まい続けることはとても重要なことですね。

辻:リロケーション・ダメージという言葉がありますが、環境が変わることによって生活力が低下することがあり、高齢者の場合、特に顕著だとされています。その人らしく暮らすためには、住み慣れた地域での生活が大切です。住み慣れた地域、見慣れた風景の中で自分らしさを発揮できるとすれば、それを保証するためのシステムをつくることが必要です。

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