日経メディカルのロゴ画像

超高齢社会の医療とシステム(1)
心豊かに生きられる社会の実現と、価値観の変容の必要性

2009/08/17
東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫氏

東京大学高齢社会総合研究機構教授 辻 哲夫氏

 WHO(世界保健機関)は、健康を「単に身体的に良好であるだけでなく、精神的、社会的にも良好な状態にあること」(“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity
”)と定義している。
世界に類をみない超高齢社会に突入した日本において、私たちが真に健康であるためには、社会的にもアクティブな状態を維持し、長生きをして幸せだったと思えなければならない。そのような社会の実現をめざして高齢者や高齢社会の諸問題を解決するために生まれた学際的学問がジェロントロジー(老年学)である。
ジェロントロジーは医学、看護学、工学、法学、経済学、心理学、倫理学、教育学など幅広い領域を包含し、それらの学問領域の英知を結集して超高齢社会のあるべき姿を探る。今回のトップインタビューは、東京大学高齢社会総合研究機構教授の辻哲夫氏に、超高齢社会における医療と社会システムについて語ってもらった。
第1回目は、私たちが直面している超高齢社会の課題とその解決策について持論を展開していただく。辻氏は「高齢化は社会変革の好機」と捉え、「すべての人の尊厳が平等であるべき社会をつくるためには、私たちがまず価値観を変えなければならない」と語った。
第2回目では、住み慣れた地域でいつまでも自分らしく生きられるための千葉県・柏市での実証研究など高齢社会総合研究機構のミッションについて語っていただく予定である。

(聞き手:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田 英也 構成:21世紀フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒)

経済が発展すれば、都市化、少子化、高齢化が必ず訪れる

─いわゆる団塊の世代が高齢期に達して、日本は世界に類をみない超高齢社会に突入しました。日本の来し方、行く末を考えると、このままでいいのかという不安を拭いきれません。

辻:今後、老齢人口(65歳以上)は2030年頃まで増加し続け、2030年には75歳以上の人口は、今の約1100万人から2200万人強になります。100歳以上の超高齢者も3万人から20数万人に増え、2050年には60万人に達すると推計されています。しかも、都市部の高齢者が増加します。私たちがこれからの20〜30年間を漫然と過ごしていれば、多くの日本人が高齢者の世話に追われ、高齢者も世話になることで肩身の狭い思いをするといういわばつらい社会になってしまいかねません。

 そこで考えていただきたいのは、経済が成長、発展し、医療技術も進歩し社会保障が整備されて長寿が実現しましたが、その結果として高齢期が不安な社会になるのだとしたら、何のために一所懸命に働き、経済成長を成し遂げ、長寿社会を実現したのでしょうか。超高齢社会はそうした問いを私たちに突きつけています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップページトップインタビュー > トップインタビュー 新着一覧

トップインタビュー 新着一覧

この記事を読んでいる人におすすめ