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「赤ひげと天才」。医療界には両方の人材が必要

2009/07/06
ノバルティスファーマ株式会社代表取締役社長 三谷宏幸氏

―基礎研究、臨床研究の面でも、米国は非常に優れています。

三谷 研究面で象徴的なのは、医工連携です。スタンフォード大学に行くと、医学と工学の研究者がそれぞれ同じ人数集まって、一緒に医療機器を開発するプロジェクトが数多くあります。例えば10人の放射線科の専門医と、10人の工学博士が、お互いに協力して、新しいMRIを開発していくのです。内臓に突起物があった場合、放射線科の医師は、それがどのように見えるのかをよく知っています。工学の研究者は、その医師の識見に助けられながら、医療現場で使い勝手の良い、鮮明な画像が得られるMRIの設計を考えるわけです。

―米国ではそうした連携をずいぶん前からやってきて、成果を得るための方法論が確立しているわけですね。

三谷 必ずしも医工連携に限らず、先端技術への取り組み全体に言えることですが、米国では将来性が豊かだと判断した部門には、国策として大きなお金をかけます。その判断と、お金のかけ方が戦略的で優れています。

―それは、治験や創薬の世界でも言えるのでしょうか。

三谷 創薬の基本になるバイオインフォマティクス(生物情報学)の分野でも、裾野の幅広さ、大きさは驚くほどです。研究者の数とか、研究にかける時間、お金が日本とはケタ違いです。そうした裾野の差で、日本は、やっぱり欧米に負けてしまう。NHKの報道などを見ると、アジアではシンガポールが、欧米と似た形の共同研究の仕組みを作っていますね。トップダウンで、あるテーマに人材もお金も集中していく。日本の場合は、全体の方向性というか、グランドデザインが明確ではないので、いつも「あれもこれも」になって、中途半端になってしまうのが残念です。

産業政策として医療を見る視点が必要

―現在の医療危機に関しても、改革のためのグランドデザインがなかなか出てきません。外資系の製薬会社のトップとして、一番危惧されていることは何でしょうか。

三谷 やはり気になるのは、日本の医療の質がどうなっていくかです。皆保険の保険制度も含めて、戦後に作られた日本の医療制度はたいへん優れていました。おかげで、日本の医療は非常に高い水準を保ってきた。ところが、その制度が、いまほころびかけています。

例えば勤務医の過剰労働の問題や研修医の偏在といった形で、さまざまな面でほころびが出てきています。これまで素晴らしい制度を作り、素晴らしい産業として、有能な医師を輩出してきた日本の医療が、いまは欧米に比べて、スローダウンしてきている。その中で、いかに医療の質を確保していくのか。このことは医療関連の産業に携わる者としてもまた、1人の患者としても非常に気にかかるところです。

―医療の質を担保するために、いま何をすべきだと思われますか。

三谷 現場の医師の負担をなんとかして軽減し、治験を始めとした臨床研究に取り組む時間的な余裕を作ってあげるべきだと思いますね。負担を軽減するためには、例えば医療クラークを配置して、医師の事務負担を軽減することが考えられます。また、カルテやレセプトの電子化をうまく進めて、その面でも、医師の負担を軽くすることもできるでしょう。

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