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専門医には研究の実績を義務づけることが必要。医師をランク付けして経済的なインセンティブを

2009/06/25
内閣府総合科学技術会議議員 本庶 佑 氏

― そうなると、専門医資格のハードルも高くないといけませんね。

本庶 相当に高くないといけません。学会やセミナーに何回出たとか、そんなレベルではとてもダメです。認定資格と報酬が完全にリンクするのだから、きちっと国家試験を課すようにしなければ。その国家試験の受験資格の中に、大学や研究所で何年間か基礎研究をやったとか、これだけ臨床研究の実績があるといった条件を入れればよいのです。試験では、診療の知識や技術はもちろん、若い医師を教育する力もあるかどうかを問う。こうして試験に合格したAランクの医師は、病院にいようが、大学にいようが、高い報酬を得るという制度にするのです。

― そうなった場合には、患者側にも負担の差が出てくるでしょうね。

本庶 例えば、Aランクの先生に診てもらう場合は、保険料の自費負担の比率を上げるような措置が必要かも知れない。あまり金権的になるのもよくないから、やるなら徐々に、国民的なコンセンサスを得ながら進めるしかないでしょう。医師のランク付けについては、厚労省がものすごく抵抗するかも知れないけれども、このまま医師の仕事にインセンティブを設けないと、やる気のある現場の医師ほど、精神的に荒廃してしまうことになりかねません。

― 制度を変えると、若い医師はそれを励みに勉強するかも知れませんが、問題は既存の開業医ですね。果たして開業医にインセンティブが働くかどうか。

本庶 だから私が言っているのは、開業医と勤務医が妙な形で反目しあっているのではなくて、現在の医療危機を救うために、前向きな協力体制を作るべきだということです。例えば、開業医は週1回、公的病院で外来をする。さらに月に1回は、同じく公的病院で当直勤務をする。こうすれば、開業医は嫌でも勉強しなければなりませんし、最新の医療機器や治療のシステムに慣れるためのよいトレーニングにもなる。公的病院のほうも、当直などの仕事が楽に回せるようになる。もちろん、開業医は外来や当直は拒否してもよいけれども、その場合は、拒否した開業医の診療報酬を下げることです。

― まずはモデル地区を作って、どういう効果が出るか見てみるのも1つの方法ですね。現在の医療制度を変えずに試行できますし、それによって状況は少しずつでも変わるかも知れません。問題は、日本医師会と日本医学会がどう反応するかですが。

本庶 そうそう、いま私があげたような改革案は、日本医師会と日本医学会が前向きに話し合って、自主的に現実的な計画をまとめれば、すぐにでも実行できることです。ところが、それぞれが組織的、政治的な思惑でがんじがらめになっているから、話が非常にややこしくなって、前に進まない。結果的に、厚労省やその諮問機関などが、当面の矛盾や問題点を一時的に緩和するような折衷案を出してきて、さらに問題が複雑になってしまう。その辺の構造的な問題を、そろそろ何とかしていかないと、将来に大きな禍根を残すことになりかねないと思いますね。

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