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専門医には研究の実績を義務づけることが必要。医師をランク付けして経済的なインセンティブを

2009/06/25
内閣府総合科学技術会議議員 本庶 佑 氏

なぜ抗体が抗原を覚えているかというと、実はワクチンが、抗体の遺伝子に対して、抗原を記憶するような何らかの変化を与えているのです。その変化を与えている分子を、私は2000年に見つけたわけです。一方、利根川さんの研究は、「自然抗体」と言うのですが、もともと体に備わっている免疫のメカニズムの研究です。そうした自然抗体とはまた別に、新しい抗原に出会った時に、抗体には新しく何らかの記憶が生じる。そちらのメカニズムを、私はずっと研究してきたわけです。

― そうした研究が、いまのゲノム解析にもつながっているわけですか。

本庶 そう、つながっていますね。もともとは、ジェンナーという人が18世紀末に天然痘の種痘をやった。その種痘がなぜ役に立つのかはずっとわからなかったのだけれども、約100年後に、北里柴三郎が抗体というものがあると言った。次にその抗体は、どんな分子構造でできているかの研究が進み、抗体が体の中で作られるメカニズムも徐々に解明されてきた。

そういうふうに、研究というのは、ジェンナーの時代からずっとひとつながりにつながっている。ほんの微力ながらも、そのつながりの中に、自分独自の功績を残すというのが、私がずっと追い求めてきた、人生の価値観なんです。もちろん、功績が残らなくても仕方がない。もしも研究者として失敗したら、田舎で釣りでもしながら、開業するのも悪くないと達観する意識もありました。だからこそ、思い切って、チャレンジができたんです。

専門医には研究の実績を義務づけるべき

― 先生から研究の世界のほんの一端をおうかがいしただけで、門外漢ながらワクワクしてきました。そんな面白い、ワクワクする世界への道筋というか、突破口のようなものを、若い医学生・研修医にわかりやすく示してあげられれば、もっと研究にチャレンジする人が増えると思います。例えば、若い医学生・研修医からの関心がいま非常に高い専門医の認定制度の中に、研究をある程度、義務づけたりすれば、研究の楽しさを実感する若い人がもっと増えるのではないでしょうか。

本庶 その点を、私はずっと言っているのです。専門医は良き臨床家のはずですから、本来は非常に強い研究マインドを持っているべきです。患者を診て「なぜ?」を強く意識し、研究意欲を高められるような人こそが、専門医になるべきでしょう。ですから、ある程度の研究実績のない医師は、専門医として認めるべきではないというのが、私の基本的な考え方です。いまのように、セミナーに参加するだけで専門医を認定するようなやり方は、甘すぎると思います。

― 臨床研究と、いわば表裏一体の関係にあるのが、先端医療です。これも、国立大学の独立法人化によって、危機に瀕していると言われています。

本庶 先端医療というのは、お金の儲からない医療ですからね。日本では、まともに先端医療に取り組んでいるのは、大学附属病院くらいしかない。だから、独立法人化で、国立大学の医学部だとか附属の病院に独立採算制を強いるのは本来、あり得ないことだと私は思います。国立に限らず、私立でも、大学病院は儲からない先端医療もやらなくてはならない。それを、一般の民間病院と同じような扱いにしたら、先端医療をやる病院も、臨床研究に力を入れる病院もなくなってしまいます。

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