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専門医には研究の実績を義務づけることが必要。医師をランク付けして経済的なインセンティブを

2009/06/25
内閣府総合科学技術会議議員 本庶 佑 氏

その点、米国のポスドクは数が多いし、フレキシブルだから、自由で、発展的なキャリアも実現しやすかったとは言えるでしょうね。ただ、現在は日本にもポスドクの制度が導入されて、ポストや求人も多くなり、昔と比べるとずいぶんよくなりましたよ。希望すれば、私が行った時代と同じように、米国で研究者としてのキャリアを積むことも十分に可能です。チャンスもポストも増えた現在の方が、研究者として生きていくことはずっと楽なのに、なぜ若い人が基礎研究の世界にあまり来てくれないのか。私には、どうも不思議に感じるのです。

推理小説のような面白さ、ワクワク感

― 本庶先生の場合は、20歳前後から世界的な研究者との出会いに恵まれていました。先生が考える“基礎研究の魅力”とは何かについて、もう少し詳しくうかがいたいのですが。

本庶 私はなぜ臨床よりも、基礎研究を選んだのか。一番単純な答えは、どうせ一生やるんだったら、一番好きなことをやったほうがいいと思ったからです。臨床というのは、いわばサービス業です。自分の好きな研究だけやっているというわけにはいかない。患者さんの病気を治すために、サービスするのが基本ですね。

もちろん、臨床で患者さんが治り、感謝されるのは、ものすごく楽しいことです。私の父親は臨床医だったので、私にもそれは分かる。だから私も、臨床は嫌いではなかったけれども、それ以上に、研究への好奇心が勝っていたのです。自分の思った「なぜ?」を解き明かしていく時には、何しろワクワクする。いろんな可能性を考えて、仮説を立て、謎を解き明かしていくわけだから、いわば推理小説のような面白さがあるのです。

― しかも、世界中の研究者が、同じテーマを巡って、つばぜり合いを演じていたりする。そういう競争の充実感もあるわけですね。

本庶 もちろん、最先端の部分では熾烈な競争になりますから、みんな血がのぼって、かっかとしてくるのは確かですよ。でも、そういう競争からくる興奮は2次的なものですね。それ以上に、フロンティアワークの満足感というのでしょうか。例えば推理小説でも、最初に読む人が一番楽しいわけですよ。友達から、これが面白いから読んでみろと言われて読むのではなくて、誰も聞いたことのない話を自分は読んでいるんだという面白さ、ワクワク感というのは格別なんですね。

― 1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞された利根川進さんと競いながら、謎を解き明かす時期もあったようにうかがっていますが。

本庶 世間には、そう伝わっているようですが、少し誤解があります。というのは、利根川さんがやった研究と、私がやった研究とは、同じ免疫という分野でも、意味に違いがある。わかりやすく説明するために、いま盛んに話題になっているワクチンを例に取りましょう。インフルエンザのワクチンを打つと、なぜ病気にならないのか。体内に抗体ができるからですが、その抗体が抗原の記憶を持っているから、インフルエンザにならないのです。

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