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専門医には研究の実績を義務づけることが必要。医師をランク付けして経済的なインセンティブを

2009/06/25
内閣府総合科学技術会議議員 本庶 佑 氏

医師の仕事の3大要素は「研究」「教育」「診療」である。その中で、近年、日本がふるわないとされるのが「研究」。研究の不振は、めぐりめぐって、その国の医療レベルの低下、ひいては国民(患者)が受けられる診療レベルの低下に結びつく。基礎研究、臨床研究を盛んにするには、どうしたらよいのだろうか。 医療の基礎研究の分野で、日本を代表する研究者として知られる本庶 佑氏(内閣府総合科学技術会議議員)に持論を聞いた。

(聞き手:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班編集長 桶谷仁志)

内閣府総合科学技術会議議員 本庶 佑 氏

臨床も研究も「なぜ?」が出発点になる

― 本庶先生は、免疫の仕組みの研究でノーベル賞候補になるなど、日本を代表する研究者として知られています。医療の世界で、研究者とはどのような存在だと考えればよいのでしょうか?

本庶 本来は、研究者と臨床家は矛盾するものではありません。古くから言われていることですが、良き臨床家であれば、研究マインドを持っているのが当たり前のはずです。というのも、日頃から臨床で患者を真面目に診ていれば、医師の中には「なぜだろう」という疑問が、たくさん湧いてくるはずです。患者を診て、マニュアル通りの治療しかしない医師や、「なぜだろう」と考えない医師は、医師として失格です。患者を診て「なぜ?」と考える。これが研究者の出発点なのです。

― しかし、先生が手がけてこられた基礎研究と、臨床の場での臨床研究とは、その性格や方法論がずいぶん違うように思いますが。

本庶 確かに基礎研究では、問題を細かく切り刻むというか、分析的、解析的に問題を追求していきます。一方、臨床研究では、そこまで細かく分析するのは時間的に無理ですから、患者を診てその患者に対して、いわば“問いかけていく作業”が中心になります。検査データとか、場合によっては、検査試料の反応を見ながら、「なぜ?」をベースにした最善の治療法を、いわば帰納的に追求していくのです。

ですから両者の方法論は、大きく違いますね。ただ、いまは基礎研究も非常に進んできたので、その成果を臨床研究に活かしていくことができるようになってきました。例えば、臨床研究の際に、患者の病態判定に基礎研究の成果を活かすといった、両研究の統合化が可能になってきています。

― 欧米諸国に比べて、日本ではいま基礎研究、臨床研究ともに振るわない状況といわれています。これはなぜだと思われますか?

本庶 たいへん難しい問題ですね。臨床研究に関して言うと、1つには現場が忙し過ぎることがあります。大学病院などの勤務医が減って、開業医に流れているために、臨床研究の主な担い手である勤務医は日常的な診療に忙殺され、臨床研究の時間が取れなくなっています。さらに、もう1つの要素としては、患者の要求が昔よりも過大になってきたことがあります。

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