——まさにグローバルな視点からの構想ですね。
大竹 グローバルといっても、この場合は、主に米国からの構想です。米国は、最近は国としての限界が指摘されたりもしていますが、まだまだ侮れない力を持っています。米国は、本当にあらゆる分野における壮大な“実験場”ですから、サブプライム問題のような大きな失敗もありますが、その一方で、まだ誰も考えたことのないような新しい芽も絶えず生まれてきます。
そしてその芽が、あっという間に大木になるようなダイナミズムも兼ね備えているのが米国です。ですから、グローバルな医療データベースのようなものを考える時は、私たちも国境を取り払って、シアトルの研究者グループと一緒に考えたほうが良い結果が出るのではと考えます。
例えば、医師の評価1つをとっても、彼らのやり方は徹底しています。学術的な論文から始まって、その医師が取り扱った症例などの実績、学会発表などをすべて調べ上げ、根拠のあるデータに基づいて実践的に評価する。
プロ野球の世界でいえば、イチロー選手をスカウトした時と同じように、日本にいる医療の各分野のプロフェッショナルを調べ上げているのです。この医療データベースが公開されれば、米国の医療機関が欲しいと思う日本の人材には、スカウトも動くことでしょう。
——その医師のリストは、日本で一般的に名医と言われている医師のリストとは中身が違うのでしょうか?
大竹 世界的な医療レベルで検証すると、必ずしも一致するというわけではありません。
反対に、一般にはまったく知られていなくても、世界的に非常に高く評価されている医師の方もたくさんいらっしゃる。例えば、筑波大学の山田信博学長は、恥ずかしいことに私も最近まで存じ上げなかったのですが、高脂血症の世界的権威です。
日本の研究者、臨床医を米国流の視点から詳細に見ていくと、世界的に注目されている学者が日本にも大勢います。また、医療機器の分野でも、日本の機器メーカーは世界的なレベルにあります。米国のメーカーの中からも、「ぜひ共同開発をしたい」「日本から学びたい」という要望が挙がっているそうです。