日経メディカルのロゴ画像

臨床研修制度の見直しで「医師不足」は解消するのか? 

2009/05/27
社団法人 全国社会保険協会連合会 理事長 伊藤雅治氏

 こうして、一部の大学病院などから、諸悪の根源が新臨床研修制度であるかのような批判が起こり、2年間の研修を1年間にすべきだという議論まで出てきたのです。しかし、私は、どういう医師を育てていくかという制度の課題と、当面の医師の不足、偏在をどう是正していくかという方法論とは、基本的にまったく別の問題だと思いますね。

― 新臨床研修制度は、医療現場が専門化し過ぎ、“病気を診て人を診ない”医師が増えたという反省から生まれたと聞いていますが。

伊藤 スーパーローテーションというのは、新臨床研修制度が義務化される以前から、医師の教育に熱心な大学では実施していました。私は、厚生省にいた頃に、すでにスーパーローテーションを実施していた川崎医科大学で話を聞いたことがあります。

 その時に一番印象に残ったのは、旧制度で育った先生と、スーパーローテーションで育った先生の一番の違いは何かという話でした。スーパーローテーションで育った先生は、救急車で運ばれてきた患者さんを診て、何科のどの先生に頼めば一番良い診療ができる、という判断ができるようになったというのです。2年間、きっちりローテーションで学べば、それくらいのことができるようになるのです。

 新臨床研修制度の基本的な考え方は、こうした臨床医として必要最低限の総合的な、全人的な診断能力を、2年の間に養成することです。その目的は、養成された医師のその後の評価を仔細に検討してからでないと、いささかも揺らいではいけないと思います。

聖路加病院院長の福井次矢先生は、「総合的な診療能力という面で見ると、新臨床研修制度で研修を受けた医師の資質、能力は、明らかに上がってきている」とおっしゃっています。

― 見直し案では、必修科目が1年目の内科(6カ月)、救急(3カ月)と2年目の地域医療(1カ月)だけになりました。選択必修の2科目(1カ月)を加えても、必修科目を学ぶ期間は最低11カ月で終了します。スーパーローテートの期間は、実質的に1年以内に短縮されました。

伊藤:そのてんが、私は不満です。、見直し案では外科、麻酔、小児、産婦人科、精神から2科目を選択必修ですから、小児、産婦人科を学ばなくても、初期臨床研修を終えることができる。

そうして養成された医師が当直勤務をしている時に、例えば、妊婦が救急車で運び込まれてきたら、果たして正しい判断が下せるでしょうか。問題は、到達レベルをどこに置くかですが、私は、見直し案では、必要最低限の総合的な診断能力が養えるとは思えないのです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップページトップインタビュー > トップインタビュー 新着一覧

トップインタビュー 新着一覧

この記事を読んでいる人におすすめ