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日本の医療は、医師の「倫理観」で支えられている (2)

2009/04/30
東京慈恵医科大学附属病院 院長 森山 寛 氏

 だから私は、どうせ規制するのなら、勤務医と開業医のバランスをコントロールしたほうが良いと思いますね。ドイツのように、開業できる人数を絞るやり方も検討するに値する一つの案だと思います。この地域では、整形外科は、何人まで開業できるといった枠を決めるやり方です。

――診療科間の医師の偏在には手をつけなくても良いと?

森山 現在は全科あわせて毎年3500名程度の医師が増加しています。平成10年と平成18年の比較では、26600人の増加です。しかし減少している診療科が3科あります。外科(3287名減)、産婦人科(1324名減)、耳鼻咽喉科(45名減)です。

 しかしながら日本の場合、20年というような長いスパンで見ると、診療科別の医師数はけっこう安定しています。年によって増えたり、減ったりはありますが、例えば耳鼻咽喉科だったら、全体の4%でほほ安定している。何もしなくても、社会的なニーズのある診療科に、医師が流れていって均衡するというのが、日本の医療の特徴なのです。

 なぜそうなるかというと、学生が診療科を選ぶ時に、若い情熱で選ぶからです。婦人科の医師が足りないので患者が困っているということになれば、「じゃあ、僕が私がやろう」という人が自然に増えてくる。ただし、訴訟(民事)やクレームの多い科は、やはり敬遠されがちです。とくに医療上の死亡に対して警察の介入や刑事訴訟が頻繁となると、死と隣りあわせで行っている手術などを担当する科は敬遠されがちになります。このことはもっと真剣にマスコミも含めて、国全体で考えなくてはなりません。

 今年、当院の産婦人科には、新人が10名以上も入ってきます。私の予想では全国的にたぶんあと5~6年待ったら、産婦人科も小児科も麻酔科も少しずつ増えて、数という点のみでは均衡するのではないでしょうか。日本では、若い医師たちが、社会貢献という倫理観で進路を選ぶ傾向が強いからです。

 ヨーロッパで言うノブレス・オブリージュ(高貴な義務)に似た価値観が、日本の医療の世界には流れている。最初の話に戻りますが、この素晴らしい伝統を守るために、若手の医師にいかに倫理観を醸成するかが、医師の育成では一番大事だと私は思っています。その意味でも患者さんや国民の理解、そして教育や医療への財政支援が必要です。

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