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日本の医療は、医師の「倫理観」で支えられている (2)

2009/04/30
東京慈恵医科大学附属病院 院長 森山 寛 氏

 日本の弁護士会の中に懲戒に係わる委員会があるように、“日本医師協会”の中にそのような委員会を置いて、専門医が調査し、悪質な診療行為や事故のリピーターに対しては、数ヶ月なり半年なり、医業を停止する。その停止の間に、例えば近くの大学や、出身大学で組んだプログラムで勉強し直してくれば、その時はもう一度、再審査しましょうと。それくらい厳正な体制が必要だと思いますね。

――医師の側で、それくらい厳しく身を律すれば、患者側に対しても、あるべき姿を提案できますね。「医師を育てるのは患者だ」というのが、先生の持論ですが。

森山 日本の患者は、個人としての権利意識は、ものすごく強くなっていますね。ただ、より良い医療サービスを受ける権利というのは、自分の世代だけで完結するものではありません。

 先ほども少し触れましたが、自分の次の世代にも、同じように良い医療サービスを受けてもらうにはどうすべきかを考えるのが、本当に賢い患者のあるべき姿です。そこの視点が、今は抜け落ちている。将来、良い医療が供給されるためには、良い医師の育成が大事で、患者の協力が最も重要になります。

 医師の側でも、こういう先端的な医療ができたので、これまで治らなかった病気が治ると、盛んに宣伝してきた経緯があります。そうはいっても、治るのはまだまだ一部の病気だけだし、多くの患者はやはり死んでいくという現実もある。

 その辺りを国民全体が誤解していて、“大学病院などが提供している高い水準の医療が、全国津々浦々で、夜中でも受けられなくてはならない”と錯覚しているところがありますね。

 夜間に心臓マヒで心肺停止になったが、偶然居合わせた医療関係者により心マッサージを受けながら、たまたま運良く20~30分以内に2次救急病院に運び込まれて、たまたまその夜に専門医が当直していたので、奇跡的に一命を取り留めた人がいたとします。これは極めて運が良かったのであって、彼が受けた医療は、都心の病院密集地域であればその可能性はあるかもしれませんが、全国的にみると標準的な医療ではないのです。

 大学病院の医療水準と診療所の医療水準は違うし、昼間と夜中の医療水準・環境は違います。都会と地方の医療水準・環境も違います。なるべく差を縮めようと努力してはいますが、すべてを全国一律にはできるはずがありません。一般の方には、そこを是非理解して欲しいと思います。

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