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日本の医療は、医師の「倫理観」で支えられている (1)

2009/04/15
東京慈恵医科大学附属病院 院長 森山 寛 氏

――平成16年度から義務化された新臨床研修制度は、総合医を養成する米国式の研修を下敷きにして作られたと言われています。その研修制度も、今年2月の「臨床研修制度のあり方に関する検討会」によって、一部、弾力化されました。やはり日本の実情にはそぐわない部分があったのでしょうか。

森山 新臨床研修制度は、従来からの研修制度を改善したというプラスの意味はたいへん大きかったと思います。研修医の待遇は改善され、研修指定病院の研修プログラムも進歩しました。しかし一般病院へと研修医が流れ、地域に医師を派遣している大学病院への入局が減り、結果として地域から医師を引き上げざるを得なくなったことも事実です。

 またプログラムにしても必修科目があまりにも多く、現場の負担が大きい上に、実情にそぐわない部分もありました。例えば日本の内科の医師は、お産もしないし婦人科の内診をすることはまずありません。もしも、産婦人科の医師でもないのに、そんなことをしたら、訴訟問題になってしまいます。

 米国の仕組みやシステムを日本に持ってくる場合、日本の文化や日本の医療の実情に適合するように改良しないと、うまく機能しないことがあります。新臨床研修制度の場合は、来年度から必修の診療科は内科(6カ月以上)、救急(3カ月以上)、地域医療(1カ月以上)だけになります。以前は必修だった外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科は選択必修科目となり、2診療科を選択する案が提出されています。

 この変革によって、初期研修の2年目に入ると、研修医は自分の目指す診療科にほぼ特化して研修を受けることが可能になりました。研修医を受け入れる各病院でも、個性や工夫を活かした研修が可能です。ただしこの改革と同時に学生の医行為の拡大を図る必要があります。

また現在の案では大学病院の定数を削除するようですが、これも本末転倒で、日本における医師教育の崩壊につながる恐れがあります。

日本の医療に貢献できる臨床医の適性とは?

――先ほど指摘された「倫理観の醸成」の障害になりかねないと、しばしば指摘されるのが大学受験時の偏差値の問題です。難しい試験を突破して医学部に入学してくる学生は、偏差値が相当に高い一方、必ずしも医師という仕事を強く望んでいるわけではないようですね。

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