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日本の医療は、医師の「倫理観」で支えられている (1)

2009/04/15
東京慈恵医科大学附属病院 院長 森山 寛 氏

聞き手:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田英也
構成:21世紀医療フォーラム取材班 編集長 桶谷仁志

東京慈恵医科大学附属病院 院長
森山 寛 氏

「医師の育成」をめぐる課題は幅広い。医学部在学中の卒前教育、臨床研修などの卒後教育、さらに現役医師の生涯教育までを俯瞰して、育成環境=医療現場の環境改善も視野に入れる必要があるからだ。21世紀医療フォーラムでは、「医師の育成」研究部会の座長をつとめ、「患者が医師を育てる」が持論の東京慈恵医科大学附属病院 院長 森山 寛 氏に、日本において、あるべき「医師の育成」の姿について聞いた。

メディカルスクールの意味は?

――より良い医師の育成のために、日本にも米国式のメディカルスクール(医科大学院)を導入しようという意見があります。先生は、その意見には疑問を呈していらっしゃいますね。

森山 医療や医療体制は、その国の文化と密接に結びついており、日本と米国では、医療の仕組みや社会的背景がまったく違います。メディカルスクールを導入しようと言う人たちは、そこをあまり深く考えていないのではないでしょうか。

 医療の領域に限らず米国では、高い収入を得るということが、その人が努力したという証になっています。ほとんどの医師たちは、勉強し、腕を磨き、治療の実績をあげると、より専門性の高い専門医に応募して、どんどんステップアップし高収入を得ていく。それ以外の医師は総合医として働くことになります。

 だから医師の専門性に従って、医師の収入にも自然とランクができる。同じ病院に勤務していても、例えば心臓外科医という専門医は、総合内科医の3倍以上の給料をもらっています。良い医師イコール給料の高い医師なんですね。こういうふうに努力の価値判断が非常にわかり易い国では、医師になる動機もシンプルですから、4年制の大学を終えてからメディカルスクールに行ってもそれほど問題はない。

 しかし、日本は違います。診療科別で給料の差はありません。医師の報酬は一律の診療報酬の枠内で決まりますから、特殊なあるいは高度な医療を提供しても、必ずしも高い報酬を得られるわけではありません。特に勤務医の場合、仕事はかなり過酷なのに、40代後半になっても年収は1000万円に届かないというのが実情です。もちろん、このような勤務医の劣悪な待遇は、一刻も早く改善されなければ医療崩壊はますます進みます。

 そんな勤務環境の中で、何がモチベーションになっているかというと、“情熱”とか“志”といった医師個人の持つ「倫理観」なんですね。お金儲けが目的ではなく、「人を助けたい」「社会に貢献したい」という倫理観で、世界トップレベルの日本の医療制度は支えられていると言えます。これが希薄になると、日本の医療制度の基本は維持できないと言ってもいい。

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