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「医師不足」問題の根底にあるもの
~外科医はゴッドハンドを持っているわけではない。(2)

2009/03/17
門田守人 氏 (大阪大学副学長)

図12「我が国における医学界の構図」

――「医師不足」の根底には、医師の労働環境から報酬制度、医療費のあり方まで、数多くの複雑な問題がからみあっているわけですね。

門田 もちろん、医師側にも改革しなければならない課題はたくさんあります。日本医師会、日本医学会といった組織の運営を近代化し、医師本来のプロフェッショナリズムを発揮できる場にしなければならないと思います。

また、個別の学会が、学会のメリットを優先してばらばらな形の認定制度を作っている現在の専門医制度も、改革の余地が大きいでしょう(図12)。

一方、国民の側にも問題はある。例えば受験制度です。大阪大学の医学部で、一度学生に聞いてみたのですが、彼らの中で医者になりたくて、あるいは生命科学に興味があって医学部に来た子は半数以下でした。

要は、勉強ができるというだけの理由で、医学部に入ってくるのです。高校生は、大学入試センター試験で順位付けされて、上のほうの子から、東大の医学部、京大の医学部……というように偏差値の高い医学部から順番に受験するわけです。

高校でも予備校でも、そういう指導をするし、親もそれを良しとしている。結果として、医者の仕事にはあまり興味が持てず、適性に乏しいけれども試験では優秀な子が医学部に入ってきて、6年間勉強し、卒業すると自動的に医師になっていく。

受験エリートとして医学部を選び、安定した高収入のために医師になるわけだから、割に合わない外科や産科などの診療科を選ぶわけがありません。これも医師の偏在の大きな要因なのです。

このように、ひと口に「医師不足」といっても、いろんな要因が積み重なって、実に複雑な形になっている。しかも複雑な形の大半が、氷山のように水面下に沈んでいるから始末が悪い。

複雑な形を一つ一つ解きほぐして、地道な政策によって一つ一つ解決していくしか方法はありません。

まず第一に、今後の日本の医療の方向性をどうするかのビジョンを打ち出す必要があるでしょう。例えば、同じ病院でも、1000床の大学病院と、70~80床の地方病院では、提供する医療の質も医師に求められるスキルも違ってきます。

日本の医療を、どちらの方向に向けるかによって、「医師不足」の打開策も違ってくるはずです。そういう根本的な議論をせずに、表面だけを取り繕っているのが、今回の医学部の定員増だと私は思います。

官僚にしても、政治家にしても、もっと地道に問題解決に取り組む人が出てきて欲しいものです。

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