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「医師不足」問題の根底にあるもの
~外科医はゴッドハンドを持っているわけではない。(1)

2009/03/07
門田守人 氏 (大阪大学副学長)

図4「大阪大学外科教室での手術件数と平均手術時間の年次推移」

――なぜ、それほどの長時間勤務が必要なのでしょうか。

門田 1つには、手術件数の増加です。がんはもちろん、臓器移植や内視鏡手術の増大などで、外科の手術件数は着実に伸びています。ところが、集約化その他で、手術施設数は逆に減っているのです。そのため、1病院で担当する手術数は約38%も増えています。医師数が減っているのに、仕事は4割近く増えているわけです。

より進んだ手術を実施することの多い大学病院、地域の拠点病院などでは、1件あたりの手術時間が長くなるために、手術件数だけでは計れない負担が増えていると考えられます。

私の勤務している大阪大学の外科教室で、私が教授に就任した年から2005年(平成17年)まで、過去12年間の手術件数と平均手術時間を調べてみたら、平均手術時間は約60%も伸びていることがわかりました(図4)。大阪大学の場合、手術台、病床数に限りがある関係で、手術件数はほとんど増えていないのですが、仕事自体は60%も増えていることになります。

図5「OECD諸国の人口1000人当たりの医師数と労働時間」

外科医の70%は当直明けでも手術する

――医師数の国際比較はよく取り上げられますが、医師の労働時間の国際比較はありますか。

門田 医師数は、OECD30カ国の人口1000人に対する平均医師数というデータがありますね。OECD全体の平均が3人なのに対して、日本は2人という結果が出ています(2006年)。

労働時間に関しては、英国、フランス、ドイツなどではOECDのデータがあります(図5)。3カ国ともに、1週間の平均勤務時間は48時間以下で、48時間を軽く超える日本(国立保険医療科学院タイムスタディ)との差が際だっています。

図6「当直明けの出術参加」

――医療事故や訴訟リスクの問題も大きいようですね。

門田 進んだ医療を提供する医療施設ほど、夜間も昼間と同じレベルの医療を継続することが求められています。医師は当直勤務でその要求に応えていますが、医師数が少ないため、交替で勤務することができない。当直明けの昼間にも休まず、引き続き通常の勤務をするのが常態となっている病院が多いのです。

先のアンケート調査でも、当直明けに手術するかという質問に、「いつもする」が31%、「しばしばする」が28%、「まれにある」が13%。すなわち、当直明けの昼間に普通に手術に参加する医師が70%にも達していました(図6)

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