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「医師不足」問題の根底にあるもの
~外科医はゴッドハンドを持っているわけではない。(1)

2009/03/07
門田守人 氏 (大阪大学副学長)

(構成:医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班編集長 桶谷仁志)

図1「全国の医師数の推移」(厚労省統計から)

勤務医の長時間労働は労働基準法違反!?

――「医師不足」の問題では、産婦人科医や救急医、麻酔医の不足がよく話題になります。先生は、外科の医師全体が減っていることが深刻な問題だと、早くから訴えてこられました。

門田 外科は1980年代までは花形分野だったのですが、その後は明らかな減少傾向が続いています。厚生労働省の統計(図1)では、1996年(平成8年)から2004年(平成16年)の間に外科系(外科、心血管外科、呼吸器外科、小児外科)の医師数は、2万8245人から2万7664人に減っています。

図2「外科医が考える外科志望者減少の理由」

減少率は2.1%。同じ時期の産婦人科医の減少率が1.1%ですから、外科系のほうがずっと深刻なのです。また、いわゆる一般外科だけを見ると、同じ時期の減少率は6%と、さらに大幅な減少率になります。日本外科学会の新入会者数を見ても、1980年代後半から右肩下がりの減少が続き、このままの傾向が続くと、2018年頃には、新入会者がゼロになるという試算も出ています。

――医師の数が減ると、労働環境も厳しくなりますね。

門田 日本外科学会が2006年後半に行ったアンケート調査では、会員が考える「外科志望者減少の理由」の上位は①労働時間が長いから(71.9%)②時間外勤務が長いから(71.8%)③医療事故のリスクが高いから(68.2%)④訴訟のリスクが高いから(67.3%)⑤賃金が少ないから(67.1)という結果でした(図2)。

図3「施設と勤務時間」

1位、2位を占めているのは、労働時間が長い、時間外勤務が長いという、端的な労働時間の問題です。同じアンケート調査で、外科医の週平均労働時間は59.5時間でした。労働基準法にかなっているのは週40時間ですから、ほとんどの外科医が違法な形で働いているといえるかもしれません。

また、医師不足という場合に大事なのは、開業医ではなく、病院で働く勤務医が減っているという事実です。アンケート調査でも、病院勤務者の週平均勤務時間は68.8時間。その一方、診療所勤務者(開業医とほぼ同等の労働環境だと思われる)の週平均勤務時間は47.7時間でした(図3)。週に20時間もの差があり、病院勤務者の労働環境の過酷さが浮き彫りになりました。

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