
帝京大学ちば総合医療センター 救急集中治療センター長 福家伸夫氏
医師の数は増やせるか?
「医師の数を増やすという議論がさかんですが、今の医療費・医療制度のままでは、就職できない医師を増やすだけになってしまいます」と福家氏は話す。
その理由については次のように説明する。
今の保険報酬システムでは、金をかせぐ原動力というのは医師だが、それだけでは決まらない。まず入院患者数を確保するためには、看護師の数が決定因子となる。というのは、入院の際、医療保険から患者1人につき支払われる入院基本料は、看護師1人当たりの入院患者数で決まるからである。
これは看護師の密度が高いほど高く設定されていて、従来は10:1(看護師1人につき入院患者10人)が最高の入院基本料であったが、2006年から7:1基準が新設され、これが最高額になった。
つまり看護師の数が制限因子になるため、病院では医師数だけ増やしても入院収入をそれに比例して増やすことはできない。しかも、医療の質を上げようとしたら、検査技師その他コメディカルの数も増やさなければならず、病院としては、医師を1人増やしてもそれに見合うだけの売り上げを期待するわけにはいかないから、簡単に医師を雇えない。
就職できなかった医師は、転職するか開業するしかなく、当然開業医が増える。勤務医が苦労して大変だから医師を増やそうといっても、皮肉なことに今の医療費・医療制度のままでは就職できない医師が増えるだけで、勤務医は楽にはならないという。