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ER(救命救急室)の登場
このような救急医療の窮状を改善し、救急医の負担を何とかしようと、医療側が行った取り組みの1つがER(救命救急室)というシステムだ。ER=救命救急センターと思っている人が多いが、ERとは“入院患者は診ずに、救急外来に来た患者だけを軽症から重症まで診療する”システムだ。軽症患者はそこで処置して帰す。重症の場合は、専門医を呼んで一緒に診察し、入院の必要がある場合は、専門医に引き継いでもらう。
夜間でもしっかりとした診療体制をとるには、ERに夜間専門で診る医師がいるというのが合理的だ。現在、全国で夜間救急専門のERを開設する医療機関も増えている。
同センターでは准教授(山下 雅知氏)がERを1人で担当している。夕方5時から翌朝9時までの16時間勤務を週3回。それ以外に連絡、報告、会議などの通常業務もあり、専任1人では、週3回が限度である。
「悩みは若い医師が居つかず、一向に増員できない事です。確かに仕事はきついし、他科からER担当医は、“単に患者を割り振る厄介者”のように見られがち。ERに自分の存在意義を見いだせなくて、去っていく若い医師も多い。私が知る限り、きちんとERが機能しているのは福井大学の寺沢秀一先生のところくらいでしょう」と、福家氏は嘆く。
アメリカのERの現場は、メディカル・スクールを卒業して5~6年目までの医師が担っている。経験豊富な医師たちは家に居て、電話で指示をするか要請があれば現場に出向く。ところが日本の若い医師たちは、そこまで育っていない。救急現場で戦力になるような教育を受けていないからだ。結局、年配の医師がいつまでも体を張るしかない。
ERを機能させるなら、並の体力と頭脳をもった医師が普通の努力をして成り立つようなシステムを考えるべきであろう。